日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子交換機」の意味・わかりやすい解説
電子交換機
でんしこうかんき
electronic switching system
コンピュータの制御により電話交換switchingを行う装置。電話交換機は、電話信号の経路を切り換える部分である通話路と経路の切換えを制御する部分である通話路制御装置から構成されるが、通話路の基本原理により空間分割型と時分割型に大別できる。空間分割型の通話路はクロスバースイッチなどの電磁・機械部品で構成されており、アナログ信号をそのまま交換する方式で、アナログ電子交換機とよんでいる。時分割型の通話路はデジタル信号の経路を切り換えるもので、LSI(大規模集積回路)などの電子部品で構成され、電子ゲートの開閉やメモリーへの蓄積により交換を行う方式である。この時分割型の通話路をもつ電子交換機をデジタル交換機とよんでいる。
日本の代表的なアナログ電子交換機であるD10形電子交換機は1972年(昭和47)から商用導入され、1980年代まで広く使われた。一方、デジタル電子交換機は、長距離の都市間の通話の交換を行う中継交換用としてD60形電子交換機が1982年に最初に商用導入された。また、加入者線が直接接続される市内交換用としてはD70形電子交換機の商用導入が1983年から始まった。中継交換では、他の都市から光ケーブルなどによるデジタル伝送路を用いて送られてきたデジタル信号を、おのおのの通話の接続先の都市に向けて送り出す機能をもつ。それに対して市内交換では、加入者線からの通話信号は通常はアナログ信号であるため、加入者からの信号をまずデジタルに変換するとともに、加入者の受話器に送り出す信号に対してデジタルからアナログに変換する機能を有している。そのほか、電話機への給電や、着信を知らせるベルを鳴らす機能、またダイヤルの発信番号を読み取る機能なども有するため、市内交換機は中継交換機より大型である。
[三木哲也]