電力系統を構成する発電所,変電所,送電線,配電線などのいろいろな設備を総合的,合理的かつ経済的に運用し,工場や家庭に電気エネルギーを安定に供給すること。給電業務はいわば電力事業の神経系統となる仕事で,二つに大別できる。現在所有の設備を巧みに使用して,良質の電気を日夜供給する仕事がその一つで,需給運用,系統運用,系統保護などがあり,それを直接担当する指令機関は給電所と呼ばれ,ここから発せられる指令は給電指令といわれる。また設備の現状と発電と需要の動向を検討し,設備の改善増設や運用計画を作成する仕事が他の一つで,給電計画と呼ばれる。給電業務は中央給電指令所,系統給電指令所,地方給電所というような階層構造の給電指令系統を通じて遂行される。中央給電指令所は給電指令機関の中枢として需給調整などの全系的な調整業務や,基幹系統の給電指令業務および下位給電指令機関の統轄業務などを担当する。とくに巨大な電力系統では,さらに系統給電指令所を別に設け需給調整以外の業務を分担させる場合がある。中央給電指令所の下に,ある地域,電圧階級の電力系統の給電業務を受け持つ地方給電所(店所給電所ともいう)がある。さらにこの下に,いくつかの発電所,変電所,開閉所などを集中的に遠隔監視制御する制御所や,需要家に対する窓口業務を担当する支社営業所などがある。中央給電指令所より,制御所,営業所,各発・変電所に至る一連の給電指令系統は幾層かの階層構成のコンピューターシステムと,これらを相互に結ぶ信頼度の高い通信網よりなる。電力系統の時々刻々の状態を表す多数の情報をディジタル信号に変換し,一定周期で繰り返し伝送するサイクリックディジタル伝送(CDTと略称することがある)と,電力設備・機器の運転操作などの給電指令その他のメッセージを伝えるメッセージ伝送により,給電所や制御所,発・変電所相互間の情報交換が行われる。中央給電指令所は下部の給電所などからの報告に,降雨量,雷雲観測などの気象情報を加味して日々の電力需給の予想をたて,下部の給電所間の電力融通計画も添えて,下部機構に運用予定を指令する。電力需給予想を変更せねばならぬ場合や,事故でも末端給電所は独断で運用を変更せず上位給電所に連絡しその指令を受ける。給電計画は,過去の電力需給の統計記録を基にして,自地域の発電設備や需要家の性格を分析し,その動向を予想することによって行われる。
執筆者:芹沢 康夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
良質・低廉な電力を需要家に供給する目的で、発電から配電に至るまでの各設備を総合運営することをいう。たとえば、電力の需要家には一般家庭用の電灯負荷、ビルディングなどの業務用負荷、工場などの電力用負荷などがあり、それぞれ必要なときに必要な量の電力を使用するので、全体の需要量は大きく変動することとなる。当然のことながら、電気は貯蔵することができない。したがって、発電所では電力の消費に追従して電力を発生しなければならない。この発電所にも、原子力発電所、火力発電所、水力発電所などがあり、それぞれ特性が異なるので「どの発電機にどの程度の電気を発生させるべきか」を考慮する必要がある。このように、需要家の負荷電力に対応して発電機の発生電力を調整することを需給調整、または周波数調整といい、給電のもっとも主要な業務となっている。このほか、電圧調整(いつも電圧が一定になるようにすること)、潮流調整(電力の流れが円滑になるようにすること)、送電線や変圧器などの電力機器の使用・停止時の調整、系統事故時の復旧操作などがある。給電業務はきわめて複雑多岐にわたるので、中央給電指令所を中心に、系統給電指令所、地方給電所に指令が伝達され総合運営されている。
なお、これらの業務は、コンピュータを活用した自動化システムを用いて行われている。
[内田直之]
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