日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロスバー交換機」の意味・わかりやすい解説
クロスバー交換機
くろすばーこうかんき
自動式電話に用いられる自動交換機の一種で、クロスバースイッチを使用したもの。電話加入数の増大、自動電話交換網の拡大に伴って電話網を効率的に構成したり、通話品質を向上させるなどの要請が強まってきて、それまでのステップ・バイ・ステップ交換機ではこれを満足させることができなくなり、共通制御方式によるクロスバー交換機が登場した。日本では1955年(昭和30)にアメリカ製のものが、56年に国産のクロスバー交換機が導入された。
クロスバー交換機の主要部分はクロスバースイッチで、縦・横に数本~数十本のバーがあり、交差するところに接点がある。縦横のクロス(交差)する点がバーの動きで接続されるので、クロスバーcrossbarの名称がつけられている。従来のステップ・バイ・ステップ交換機は、加入者からのダイヤルにより接点が上昇および回転して接続する構造であり、スイッチが摺動(しゅうどう)式(すり接触)なので、摩耗による故障が多かった。これに対してクロスバー方式では、接点を開閉するだけなので、雑音が少なく、寿命も長く、動作安定性も高いという特徴をもっている。また、ダイヤルされた情報(パルスの数)を別の機械に蓄積しておいて、ダイヤル終了後、交換機の動作上もっとも都合のよい形に翻訳して通話回路を作成し、接続が完了すると共通制御回路が復旧し、次の呼びに備える共通制御方式を採用している。そのため迂回(うかい)中継機能や中継線使用能率の向上を図ることができて、経済的な全国自動即時網の構成が可能となった。
交換機の種類としては、加入者線交換用(市内交換機)と中継線交換用(市外交換機)とがあり、前者には加入電話200程度の小局用から数万の大局用まで、後者には数十の回線から数千の回線を収容できるものまで、いくつかの種類に大別される。
その後、1971年(昭和46)にコンピュータ制御によるアナログ電子交換機が導入され、さらに82年には、音声をデジタル化した後に信号処理で交換を行うデジタル交換機が導入され、クロスバー交換機はこれらの交換機に置き換えられていった。
[宇治則孝・星野博文]