青海省(読み)セイカイショウ

デジタル大辞泉 「青海省」の意味・読み・例文・類語

せいかい‐しょう〔‐シヤウ〕【青海省】

青海

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改訂新版 世界大百科事典 「青海省」の意味・わかりやすい解説

青海[省] (せいかい)
Qīng hǎi shěng

中華人民共和国西北部にある省。略称は青。北東は甘粛省,北西は新疆ウイグル自治区,南西はチベット自治区,南東は四川省と接する。面積72万1500km2,人口482万(2000),1地区級市,1地区,6自治州からなり,さらにこれらが43県級行政地域(4市轄区,2市,30県,7自治県)に区分されている。省都は北東部の西寧(せいねい)市。

青海省はほぼ全域が青蔵高原に属し,北は祁連(きれん),西は崑崙,南はタングラ(唐古拉),東は西傾山などの各山脈に囲まれる。青海高原と総称する北東部の青海東部,南東部の玉樹,南西部の青海南部の各高原と北西部のチャイダム(柴達木)盆地に区分できる。北東部の青海東部高原は黄河およびその支流湟水(こうすい)の河谷盆地や青海湖盆地と祁連山地からなる。黄河,湟水の盆地には黄土が分布し,河岸段丘が発達する。高原中央部の青海湖は塩水湖で,中国最大の湖である。祁連山脈は冷竜嶺,ダバン(達坂)山などからなる東西走向の平行山脈である。南東部の玉樹高原はチベットのナッチュ(那曲)から北東にひろがる高原で,なだらかな丘陵と河谷盆地がつづき,怒江の源流部,長江(揚子江)上流通天河の流域にあたる。雨量も比較的多く,草原や湿草地が広く分布する。南西部の青海南部高原は標高4200~4700mで,青海省でもっとも高い地域である。チベットの羌塘(チヤンタン)高原の延長部であり高冷乾燥気候を示す。黄河や長江の源流地域でもあり,源流部の山頂には氷河が発達,さらに東方には高冷地砂漠,永久凍土地帯や広く浅い河谷がひろがる。ブルハンブダイ(布爾汗布達),アニェマチェン(阿尼馬卿,積石)とバインハル(巴顔喀拉)山脈との間に星宿海,ギャリン(札陵)湖,オリン(鄂陵)湖などの湖がつづき,黄河が東流する。北西部のチャイダム盆地には中国最大の風食地がひろがり,砂漠や塩湖が発達,年降水量15~200mmの少雨地域となる。最暖月の平均気温が10~18℃あり,西北乾燥地域の特色もそなえている。

青海省北東部,黄河や湟水の流域の西寧市大通回族トゥ(土)族自治県や,湟中県,循化サラ(撒拉)族自治県など海東地区一帯には約4000年以前の彩陶や磨製石器が発見されている。これは甘粛省馬家窰(ばかよう)の遺跡の出土品と共通するもので,青海でも甘粛仰韶文化があったことが確認されている。また,同地区民和回族トゥ(土)族自治県核桃荘辛店では銅器が出土しており,青銅器時代に属する〈辛店文化〉や〈斎家文化〉が存在していたことが知られている。そのほか,省北東部にはいくつかの新石器時代の遺跡が発見されている。歴史時代に入ると青海省は漢族からはチベット系の〈羌(きよう)〉族の住む地とされた。漢代には西羌とよばれ,西寧西方には臨羌県もおかれた。後漢には西平郡がおかれ,西寧は西都県に属し郡の治所となった。王莽(おうもう)の時代には西海郡となったが,4世紀ころには吐谷渾(とよくこん)や唐代には吐蕃の勢力下に入った。このころから〈青海〉の名がよく使われるようになる。北東部を中心に,宋代には西寧州,元代には貴徳州が設けられた。清代中期には,青海の地域は甘粛省に属し,青海辦事大臣がおかれた。この間,明代にすでにモンゴル族が2度青海に入っており,清代には北部がモンゴル・エルート部となり,5部29旗おかれた。のち,南部には土司による統治形態がとられ,玉樹族中心に49族設けられた。このような封建制の段階では,牧畜をおこなうチベット族にとって,土地は部族共有であったにもかかわらず,封建牧主によって草原の支配権が貫かれたため,家畜税や労働の形で搾取された。チベット仏教寺院もまた,牧主同様草原の支配権を有していた。明代に建てられた湟中県のタル(塔爾)寺はチベット仏教ゲル派(黄教)の六大寺院の一つとして知られるが,土地は40ha以上所有,周辺100kmまで支配,僧も最大3600人におよんだ。民国成立後,青海辦事大臣は廃止され,1928年には青海省となった。

青蔵高原最大の都市である西寧は古くは湟中ともよばれ,湟水河谷にあって東の農産物と西方牧畜地域の産物との交易中心である。毛織物,化学肥料などの近代的工業も発達,橋頭経済開発区を設立し,ハイテク産業とインフラ整備をすすめている。また,国の重要プロジェクトの西寧からチベットのラサに通ずる青蔵,また新疆のウルムチに通ずる青新自動車道や蘭青(蘭州~西寧),青蔵(西寧~南山口)鉄道が通る。チャイダム盆地の北西部には冷湖やマンナイ(茫崖)など油田,天然ガス田がひろがる。また,東部のチャルハン(察爾汗)塩湖や青海湖東部のツァカ(茶卡)塩池などでは塩やカリ塩がとれる。牧畜は玉樹,チャイダム東部でさかんである。羊のほかヤクの飼育の割合が高く,全国飼育総数の40%をこえ,羊毛やカシミヤの生産量も多い。農業は青稞(ハダカムギ)栽培が中心である。青稞はチベット族の主食ツァンパ()の原料とされる。また,黄河や湟水河谷のほか,チャイダム盆地などでは灌漑農業が発達,小麦,アワ,エンドウのほか綿栽培がさかんである。漢方薬,チベット薬の薬材資源も豊富である。省内には43の少数民族が集まり,人口の42.8%を占める。なかでもチベット族が多く,省内各地に居住する。そのほか,湟水や大通河の河谷地域にはトゥ(土)族,東部の黄河積石峡付近にはサラ族,青海湖東部にはモンゴル族,チャイダム盆地のゴルムド(格爾木)北部にはカザフ(哈薩克)族,北東の西寧付近には漢や回の各民族が居住している。全国でも,民族自治州や民族自治県が多い省である。改革開放体制のもと,民和回族トゥ族自治県には〈民族経済改革実験区〉を,ゴルムドには〈資源開発実験区〉〈昆侖経済開発区〉などの経済開発区を設け,投資環境の改善を試みているが,GDPはなお全国下位にあり,多くの少数民族をふくめた貧困層は80万人をこえている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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