日本大百科全書(ニッポニカ) 「土司」の意味・わかりやすい解説
土司
どし
中国で元代(1271~1368)から西・西南部の少数民族地区に置かれた一種の地方官。すなわち、元朝は軍民統治の流官(中央政府の任命する地方長官)である宣慰使司(せんいしし)、宣撫司(せんぶし)、安撫司(あんぶし)、招討司(しょうとうし)などをこれら地区に設ける一方、土着民族の集落の長官司として土酋(どしゅう)(土着民族の長)を用い、従来の慣行によって自治にゆだねた。これら長官司を土司、土官とよんだ。明(みん)も、この元制を踏襲し、さらに元の流官をも土司に加え、その整備拡大を図り、官爵を授与して懐柔に努めた。平時における土司の責任は3年あるいは5年に一度朝貢するだけで、流官に比べればはるかに軽かった。土司の任務の大きなものは、反乱討滅などに徴発されることで、嘉靖(かせい)年間(1522~66)の倭寇(わこう)、万暦(ばんれき)年間(1573~1619)の三大征や、万暦~崇禎(すうてい)年間(1628~44)の遼東(りょうとう)兵事などに多大な功績を残したものがいる。清(しん)代も、元・明代を継承したが、清では文職に属するものを土官、武職に属するものを土司とした。雍正(ようせい)年間(1723~35)の改土帰流(かいどきりゅう)政策でやや縮小されたが、その重要性は減じなかった。
[川勝 守]