改訂新版 世界大百科事典 「静電選別」の意味・わかりやすい解説
静電選別 (せいでんせんべつ)
electrostatic separation
電気伝導度が鉱物によって異なることを利用した選鉱法。電荷を帯びた鉱物粒子は電場の中で静電気力(クーロン力)を受ける。その力は電荷量と電場の強さに比例する。したがって鉱物の種類によって選択的に電荷が与えられることが必要である。最も広く実用されているドラム型の静電選別機について説明する。回転する金属製の円筒と対向する電極があり,電気的に接地された円筒に対し,電極はマイナス数十kVの電位に保たれている。乾いた細粒の鉱石が少しずつ円筒上に供給されると,円筒の回転にともなって強い電場内に進んだ粒子は電場の作用によって分極する。このとき,電気伝導度の低い粒子については粒子全体としての電荷量はほぼ0であるが,電気伝導度の高い粒子では分極によって生じた負の電荷が接地された円筒から移動し失われるため,粒子全体としては正に帯電することになり,電場の影響により負の電極に吸い寄せられる。また,静電場による分離力を強めるためにコロナ放電を利用する場合がある。この方式の静電選別はとくに高電圧選別high-tension separationと呼ばれている。図のような装置の金属製回転円筒上に供給された鉱物粒子に対し,コロナ電極からコロナ放電によるイオンが降り注がれる。粒子が導電性であると,このイオンによって粒子に与えられた電荷は粒子の表面や内部を通って接地電極へ移動し失われるが,不良導体粒子に対しては負の電荷をもたらす。円筒の回転にともなって静電場に到達すると,負に帯電した粒子は接地電極上に強く吸着される一方,電荷をもたない良導体粒子は前記の原理により反発し,分離される。静電選別はチタン,スズ,タングステンのほか,砂鉱床として産出する希元素鉱物などの選鉱法として,比重選別や浮選と併せて利用されている。
執筆者:井上 外志雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報