精選版 日本国語大辞典 「鞘当」の意味・読み・例文・類語
さや‐あて【鞘当】
- 〘 名詞 〙
- ① 路上ですれちがった武士が、互いに刀の鞘をぶつけること。また、それをとがめだてすること。転じて、わずかのことをとがめて争うこと。つまらないことに意地をはること。
- [初出の実例]「日本半分かまはれにけり 鞘当や源平互に急度見て〈宗因〉」(出典:俳諧・物種集(1678))
- ② 歌舞伎の趣向の一つ。二人の武士が行きちがいに刀のさやを当てたことがもとで争いになるというもの。遊里で傾城葛城(けいせいかつらぎ)をめぐって不破伴左衛門と名古屋山三が争うという内容が多い。元祿一〇年(一六九七)江戸中村座の「参会名護屋(さんかいなごや)」ではじめて演じられ、種々の変遷ののち、「浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)」に至って形式が固まった。
- [初出の実例]「不破に名古屋のさやあてサ」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)五)
- ③ ( ②から ) 二人の男が一人の女性を争うこと。また、その争い。恋の鞘当て。