改訂新版 世界大百科事典 「顔示数」の意味・わかりやすい解説
顔示数 (がんしすう)
facial index
顔の形が相対的に広いか狭いかを表すために,顔の高さを顔の幅で割った数値。頭蓋では顔高(前頭骨と鼻骨の境界点ナジオンから下顎骨の正中下縁グナティオンまで)を頬骨弓幅(左右の頬骨弓が最も側方に突出した点を結ぶ幅径)で割った値を顔示数という。またナジオンから上顎歯槽の最前下点プロスティオンまでの高さを上顔高といい,これを用いて上顔示数を算出する。上顔示数の数値によって,過広上顔型(45.0未満),広上顔型(45.0~49.9),中上顔型(50.0~54.9),狭上顔型(55.0~59.9),過狭上顔形(60.0以上)に分類される。男女の示数の差は明瞭でない。大多数の人種は中上顔型に属し,現代日本人男性の示数は51~53の範囲にある。なお縄文時代人は広上顔型(45~48)であった。
生体では相貌学顔高(前額頭髪の生えぎわの正中点トリキオンからグナティオンまで)と形態学顔高(ナジオンからグナティオンまで)の2種の顔高があり,前者を頬骨弓幅で割ると相貌学顔示数が,後者を用いると形態学顔示数が求められる。頭髪の生えぎわを決定するのは困難な場合もある。形態学顔示数の数値によって,過広顔型(79.0未満),広顔型(79.0~83.9),中顔型(84.0~87.9),狭顔型(88.0~92.9),過狭顔型(93.0以上)に分類される。男性の形態学顔示数は,女性の示数よりやや大きい。日本人は狭顔型に属する。生体の顔示数では,日本人の地域差は明瞭でない。広顔型にはキルギス人,カムチャダール(イテリメン)族らが,中顔型にはヤクート族,ツングース族,中国人,エジプト人らが,狭顔型にはチュクチ族,白ロシア人,イヌイット,チロル人らが属している。
執筆者:欠田 早苗+河内 まき子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報