航空機の安全で効率のよい航行を確保するため、各国が責任をもって航空機への情報提供(航空管制)や緊急時の捜索救難活動などを行う空域。国際民間航空機関(ICAO(イカオ))によって加盟各国に割り当てられている。英語名称の頭文字をとってFIRと略称でよばれ、「航空情報区」と訳されることもある。飛行情報区は領空(領海上空)と公海上空を含んだ空域のうち、各国の領空に対する主権よりも、円滑な航空交通を考慮して設定される。このため名称には国名をつけず、業務を担当する管制センターや航空交通管理センターの所在地名がつけられる。一般に、この空域に入る航空機には、その管制当局への飛行計画の提出が義務づけられる。日本が管轄する飛行情報区を通過する航空機の使用者には、飛行回数や飛行距離などに応じて航行援助施設利用料を課している。
日本の管轄には東京飛行情報区(東京FIR)と那覇(なは)飛行情報区(那覇FIR)があったが、2006年(平成18)に東京管制部と那覇管制部の洋上管制業務が福岡県の航空交通管理センターで一元的に実施されるようになり、空域も福岡飛行情報区に統合された。日本周辺には、ハバロフスク、ペトロハブロフスク・カムチャッキー、アンカレッジ、オークランド、マニラ、台北、上海、仁川、平壌の各飛行情報区がある。
[編集部]
FIRと略称される。国際航空交通の安全確保と効率化のために国連の国際民間航空機関(ICAO(イカオ))によって設定された空域のこと。各情報区では特定の航空交通管制機関がその空域内を飛行するすべての航空機に対して航行に必要な情報を提供し,かつ,遭難事件が発生した場合はただちに捜索・救難活動を行うことが義務づけられている。飛行情報区には公海の上空のみならず各国の領空も含まれているが,その運用にあたっては領空に対する各国の主権よりも航空交通の円滑な運航と安全性が優先して考慮されるのが特色で,その趣旨から情報区の名称も国名ではなく責任管制機関の所在地名がつけられている。日本には日本列島と西太平洋北西部を含む地域で東京航空交通管制部が担当する東京飛行情報区と,沖縄を中心とする地域で那覇航空交通管制部が担当する那覇飛行情報区の2地区が設定されている。
執筆者:関川 栄一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…航空交通管制の具体的な目的は,航空機相互の衝突予防,空港内および航行空域における航空機と障害物の衝突予防,航空交通の促進と秩序ある流れの維持にある。なお,飛行情報区flight information regions(FIRと略称される)というのは,ICAO(イカオ)の加盟国が,航空交通業務を行う責任の範囲を示すもので,技術的必要性に立脚して定められており,領空とか防衛圏といった性格はない。日本では東京FIRと那覇FIRの二つの空域がその管轄となっている。…
…航空交通の安全と秩序を図るため,航空機の離着陸の順序・時期,飛行経路などを指示し,気象状況,地上の状態など航空機の運航に必要な情報を提供する業務をいう。飛行情報区の中で管制区または管制圏に指定された空域(管制空域)および飛行場において行われる。航空交通管制の具体的な目的は,航空機相互の衝突予防,空港内および航行空域における航空機と障害物の衝突予防,航空交通の促進と秩序ある流れの維持にある。…
※「飛行情報区」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新