飛鳥彫刻(読み)あすかちょうこく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「飛鳥彫刻」の意味・わかりやすい解説

飛鳥彫刻
あすかちょうこく

飛鳥時代彫刻主流仏像彫刻であるが,伎楽面などの遺品も伝わる。おもな特徴は像がいずれも直立不動で正面を向き,体躯は扁平で腹部を前方に突き出した「く」の字形に造られ,背面を省略したものもあること (正面観照性) などである。観照者を正面だけに期待したと同時に,当時の仏像が中国の雲崗,竜門石窟などの磨崖仏を手本としたことによるといわれる。また衣文 (えもん) は左右がまったく同じように彫られ (左右相称性) ,表情は,目は上まぶたと下まぶたとが同じ弧をもった杏仁形 (きょうにんぎょう) に,口元両端を上げて微笑をたたえた仰月形である。代表的な作品は推古 31 (623) 年に止利仏師の造った法隆寺金堂の『釈迦三尊像』,『百済観音像』,夢殿の『救世観音像』『四天王像』,中宮寺の『菩薩半跏思惟像』,広隆寺の『弥勒菩薩半跏像』などでいずれも国宝。このほかにも小金銅仏と呼ばれる像がある。飛鳥彫刻の作者の多くは中国や朝鮮からの渡来人やその子孫で,大陸から将来した技術により,銅造と木造が主流を占めた。様式の主流は止利仏師の厳格な作風に代表される止利様式と,これに対し,やややわらかい作風の百済観音系の南朝様式といわれるものの2つに分けて従来考えられてきたが,その後朝鮮三国時代の仏像彫刻,ならびに飛鳥時代の渡来系の彫刻の研究が進むにつれ,さらに複雑な様式展開が明らかになりつつある。

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