馬甲(読み)ばこう

改訂新版 世界大百科事典 「馬甲」の意味・わかりやすい解説

馬甲 (ばこう)

馬のよろい。青銅または鉄の小札(こざね)をとじ合わせてつくった馬の身を防護する武具。馬鎧(うまよろい)の語も使用する。馬甲の初現についてはなお確かでないが,2~3世紀のパルティア人がこれを使用していたことは,シリアのドゥラ・ユーロポス出土の青銅製小札をつづった馬甲の実物と,同遺跡の住居で発見された,甲冑に身を固め槍を手にした戦士が甲をつけた馬を駆る壁面線刻画によって知ることができる。朝鮮の安岳3号墳や中国雲南省昭通県後海子東晋墓の壁画に描かれた馬甲と馬冑によって,馬の武具が4世紀中ごろから末には東アジアにも伝えられていたことは確実である。5~6世紀の騎俑,画像塼,壁画では馬甲の表現がさらに増加する。東アジアの実例はごくまれで,中国遼寧省北票県にある5世紀初めの北燕の馮素弗墓と和歌山市大谷古墳の出土品が知られているにすぎない。大谷古墳の例では11.0cm×7.0cmの長方形と縦8.1cm,上横6.1cm,下横5.5cmの台形との大小2種の鉄小札400余枚が使われている。いずれも甲の形は復原できないが,騎俑,画像塼,壁画の表現をもとに,北宋で編纂された《武経総要》などを参照して,南北朝時代の馬甲は四つ部分,すなわち頸(くび)すじ,胸,胴,尻に分けてとじ合わされていたものと考えられている。
馬面
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普及版 字通 「馬甲」の読み・字形・画数・意味

【馬甲】ばこう

馬の甲。

字通「馬」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の馬甲の言及

【大谷古墳】より

…石棺は,近畿の家形石棺としては初期に属し,とくに蓋の形態が九州の家形石棺の一部に酷似する。副葬品中に馬冑,馬甲がある。日本ではほかに確例をみないが,大陸では北魏などの鎧馬騎俑や高句麗の鎧馬壁画に表現され,また韓国釜山市東萊区福泉洞10号墳に馬冑をみる。…

※「馬甲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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