改訂新版 世界大百科事典 「高井田横穴群」の意味・わかりやすい解説
高井田横穴群 (たかいだよこあなぐん)
大阪府柏原市高井田の上垣内にある横穴群で,人物,舟などを線刻した壁画で有名。大和川の北岸にのぞむ丘陵斜面に,東西約500mにわたり,凝灰質砂岩の露頭を利用し,100基内外の横穴が4支群にわかれてうがたれている。横穴の玄室内部は1辺約3mの方形で,中高になった天井をもち,高さは約1.8mある。出入口に短い羨道があり,外側は掘り広げられて前庭部となる。玄室の奥壁に石棺を造り付けた数例のほか,多くは木棺を埋葬したらしい。これらの横穴から鉄刀,鏃,刀子,馬具,須恵の子持高坏,甕,器台,𤭯(はそう),土師(はじ)の竈形土器などの遺物を出土したものもあり,6世紀代に営まれたことがわかる。壁画は羨道の側壁にゴンドラ状の舟を描き,すその広がった着衣の人物を中心に,前後に漕手を乗せた情景がある。ほかに人物立像や,花文,唐草文を線刻したり,赤色顔料を塗った例もある。壁画をもつ横穴を中心に13基が史跡指定。
執筆者:北野 耕平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報