高齢者雇用(読み)こうれいしゃこよう

共同通信ニュース用語解説 「高齢者雇用」の解説

高齢者雇用

高年齢者雇用安定法によると、定年制度は60歳を下回ることができない。/(1)/定年廃止/(2)/定年延長/(3)/継続雇用制度導入―のいずれかを活用し、希望者全員を65歳まで雇用することが企業義務付けられている。総務省労働力調査によると、2020年の15歳以上就業者6676万人のうち、65歳以上は906万人を占めた。近年は65歳以上の働く人が増加傾向にある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高齢者雇用」の意味・わかりやすい解説

高齢者雇用
こうれいしゃこよう

働く意欲と能力のある高齢者を雇用すること。日本では急速な少子・高齢化の進展人口減少に伴う働き手の不足、年金支給年齢の引上げなどに対応するため、高齢者雇用が重要な政策課題となっている。高年齢者雇用安定法(旧、中高年齢者雇用促進法、昭和46年法律第68号)に基づき、2013年(平成25)から企業などの事業主には原則、希望者全員を65歳まで雇用する義務が生じた。このため、(1)定年制の廃止、(2)定年年齢の65歳までへの引上げ、(3)定年後に改めて65歳まで雇用する継続雇用制度の導入、などのいずれかを事業主は選択しなくてはならない。違反した場合、厚生労働大臣勧告を受け、従わないと事業所名を公表される場合がある。2021年(令和3)4月からは70歳までの就業機会の確保が努力義務となった。2025年度には、継続雇用対象者を限定する基準を労使協定で設けた企業を含め、65歳までの雇用確保が完全に義務化される。さらに政府は70歳までの義務化も視野に入れている。総務省の2022年の労働力調査では、65歳以上の就業者数は912万人で、65歳以上の4人に1人(25.2%)が仕事についている。

 日本では人口構造の変化、医療の進歩、栄養状態の改善、社会保障制度の充実などにより、時代によって高齢者の定義は変遷してきた。雇用法制上、明確に高齢者雇用に配慮がなされたのは1966年(昭和41)成立の雇用対策法においてである。同法では、中高年齢者(35歳以上)の雇用促進のため、事業主の努力義務として雇用率制度(従業員の一定割合を中高年齢者とする制度)を導入。1971年には中高年齢者雇用促進法を制定し、中高年齢者(45歳以上65歳未満)を対象とした職種別の雇用率が設定され、雇用率達成を努力義務とした。1976年には高齢者(55歳以上)の雇用率制度を創設し、職種に関係なく、雇用率を一律6%以上とした。

 定年の引上げでは、1973年の雇用対策法改正で、定年引上げを後押しする施策の充実を明記。1986年に中高年齢者雇用促進法を改正してできた高年齢者雇用安定法で60歳定年を努力義務とし、1994年(平成6)の同法改正で60歳定年が義務化(1998年実施)された。さらに2000年(平成12)の同法改正で、定年(65歳未満の場合)の引上げを努力義務とした。定年後の継続雇用は、1990年の高年齢者雇用安定法改正で、事業主に対し65歳までの継続雇用に努力すべきと規定。2004年の同法改正では、2006年度から雇用延長を義務づける上限年齢を段階的に引き上げ、2013年度以降は原則希望者全員に65歳までの雇用延長を義務化した。

 なお、高齢者雇用を推進するため、2022年から兼業や副業をする65歳以上の高齢者に雇用保険を適用。60歳到達時点に比べて賃金が25%を超えて低下した高齢者に対しては、60歳以後の賃金の一定割合を給付(最大15%)する高年齢雇用継続給付制度がある。同制度の給付率は65歳までの雇用が完全義務化される2025年度から、最大10%に縮小され、将来的には廃止される見込みである。

[矢野 武 2023年4月20日]

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