雇用対策法(読み)こようたいさくほう

精選版 日本国語大辞典 「雇用対策法」の意味・読み・例文・類語

こようたいさく‐ほう ‥ハフ【雇用対策法】

〘名〙 労働者職業安定と経済的社会的地位向上をはかるために昭和四一年(一九六六)に制定された法律雇用対策基本計画の策定、求職者および求人者に対する指導などを定めている。

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デジタル大辞泉 「雇用対策法」の意味・読み・例文・類語

こよう‐たいさくほう〔‐タイサクハフ〕【雇用対策法】

雇用に関する国の総合的施策を通じて労働力需給の均衡を図り、国民経済発展完全雇用達成に資することを目的とする法律。昭和41年(1966)施行

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雇用対策法」の意味・わかりやすい解説

雇用対策法
こようたいさくほう

雇用施策を総合的に講じて、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進し、経済社会の発展と完全雇用の実現に資するための法律(昭和41年法律第132号)。

 雇用対策法が制定された当時は日本経済の成長の著しい時代であり、産業構造や生産技術の変化が著しく、労働力が過剰である停滞・衰退産業が存在する一方、労働力不足の著しい成長産業が併存した。また技能労働者の不足が目立つようになっていた。

 労働力の需給を調整して、労働力過剰や労働力不足の問題や技能労働者の不足問題を解決することが、円滑な経済成長を成し遂げるうえで重要な課題であった。こうした労働市場問題を解決するために積極的な雇用政策推進が必要とされ、そのバックボーンとなったのが雇用対策法である。同法の制定により職業転換給付金制度が導入され、産業間の労働移動を促進することとなった。

 雇用対策法は、国が「雇用対策基本計画」を策定することを規定して、同計画には労働者が能力を有効に発揮するために必要となる基本的施策を盛り込むこととされた。基本的施策は、具体的には、職業指導・職業紹介の事業、技能訓練・技能検定の事業、就職困難者の就職、職業転換・地域間移動、離職者の円滑な再就職、高年齢者の雇用安定、不安定雇用の是正などに関する施策である。雇用対策基本計画は1967年(昭和42)に第一次計画が策定されて以降、政府の経済計画が策定されるつど、政府経済計画と整合的な内容の計画を新たに策定して、日本の雇用政策の指針として機能した。しかし経済情勢の変化により政府経済計画の策定が終了したことから、1999年(平成11)の第九次雇用対策基本計画を最後に策定されなくなり、2007年の雇用対策法の改正により法律からも計画策定が削除された。

 雇用対策法は制定当初と比べ、今日では労働市場情勢が大きく変化したことから、2007年の改正においては、国の雇用施策のなかに明示していなかったものの、それまでも暗黙に含まれていた青少年の応募機会の拡大、女性の就業促進、障害者の雇用安定をはっきりと明示した。また募集採用にかかわる年齢制限禁止の強化を盛り込んだ。

[笹島芳雄]

『労働新聞社編・刊『改正雇用対策法の実務解説』(2008)』『厚生労働省編『厚生労働白書』各年版(ぎょうせい)』

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百科事典マイペディア 「雇用対策法」の意味・わかりやすい解説

雇用対策法【こようたいさくほう】

1960年代半ばの若年労働力の不足,倒産による離職者の増加などに対応して作られた法律(1966年)。労働市場政策の基本法。雇用対策計画の立案,求職および求人の指導,技術労働者の養成確保,職業転換給付金等についての基本方針を規定する。いわゆる労働力流動化対策の中心をなす立法で,労働力需給の産業間・地域間の不均衡是正を目指す積極的労働力政策を樹立した。これ以降,職業訓練法の改正,雇用保険法の成立,各種の雇用安定や雇用促進に関する政策などが展開。2007年8月には改正雇用対策法が施行された。青少年の応募機会の拡大,募集・採用に係る年齢制限の禁止,外国人の適正な雇用の管理などを骨子としている。2010年,厚生労働省は雇用対策法に基づく〈青少年雇用機会確保指針〉を改正,多くの企業が大卒の新卒一括採用に偏っているのを,卒業後3年以内は新卒として応募できるように卒業生も新卒と同様に扱うよう企業側の努力を促した。→雇用促進事業団

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雇用対策法」の意味・わかりやすい解説

雇用対策法
こようたいさくほう

昭和 41年法律 132号。雇用政策の基本法となる法律。国が雇用に関し,その政策全般にわたり必要な施策を総合的に講じることにより労働力需給の質量両面にわたる均衡を促進し,労働者の有する能力の有効的な発揮に資することを目的とする。総則,雇用対策基本計画,求職者および求人者に対する指導など,技能労働者の養成確保,職業転換給付金,高年齢者の職業の安定,雑則から成る。

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世界大百科事典(旧版)内の雇用対策法の言及

【雇用政策】より

…この政策の成功のなかで,雇用情勢は急速に改善され,67年には有効求人倍率が1を超えることになり,日本でも完全雇用の状態に達したと騒がれた。このような状況を背景に,66年,雇用対策法が制定された。同法は,1条で〈国民経済の均衡ある発展と完全雇用の達成とに資することを目的とする〉と述べ,4条で,労働大臣が雇用審議会の意見を聴いて雇用対策基本計画案を作成し,この閣議決定を求め,国が完全雇用政策の具体的政策を定めることを義務づけた。…

【職業安定法】より

…第2次大戦前の職業紹介法(1921公布)は,私的な営利職業紹介や労働者募集に対する警察的取締りが中心であったが,職業安定法(1947)は労働権(憲法27条)や職業選択の自由(憲法22条)を保障する観点から,求職者に適切な就労の機会を与えることを重視している。その後,雇用対策法(1966)が積極的労働力流動化政策の実現のために制定されるにともない,職業安定政策はその一環として位置づけられるようになった。なお就職や転職の促進を目的とするものとして,雇用保険法に基づく就職促進給付,雇用対策法に基づく職業転換給付金,各種離職者法に基づく給付金の制度も設けられている。…

【労働法】より

…1947公布),失業中の生活保障を行う(1947年公布の失業保険法は後に改正され,74年には雇用保険法となり積極的な失業防止策がとり入れられた)と同時に政府みずからが公共事業を行って雇用を創出する(緊急失業対策法。1949公布,1996廃止)など,比較的後見的補助的な政策から,しだいに企業に対し身体障害者等条件の不利な人を一定の割合で雇用することを求め,奨励金を支給し(1960年の〈身体障害者雇用促進法〉(1987年〈障害者雇用促進法〉と改称),71年の〈中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法〉(1986年〈高年齢者等の雇用の安定に関する法律〉と改称),72年の〈勤労婦人福祉法〉(1985年雇用機会均等法に改称)),総合的な雇用に関する需給の調節を通じて完全雇用を目ざし(雇用対策法。1966公布),公的職業訓練を実施するとともに企業内訓練の規格化と奨励を図り(1958年公布の職業訓練法の1969年改正法。…

※「雇用対策法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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