知恵蔵 「鬼怒川決壊」の解説
鬼怒川決壊(2015年)
この豪雨は、9日から11日にかけて、台風17号と18号の影響で南から湿った空気が長時間にわたって流れ込んだため発生。東日本太平洋側では、9月上旬の降水量が平年の4倍以上になり、61年の統計開始以来9月上旬として最多記録を更新した(気象庁発表)。10日から11日にかけて、埼玉、栃木、茨城、福島、宮城の計16の観測地点で、最大24時間降水量が観測史上1位の値を更新した(国土交通省発表)。
この豪雨により、鬼怒川では10日朝から数カ所で堤防から川の水があふれる越水が発生し、その後決壊したほか、宮城県を流れる渋井川など18河川で堤防が決壊した。越水などによる浸水被害は、吉田川(宮城県)や都畿(とき)川(埼玉県)など計67河川で発生した。また、17都県で177カ所の土砂災害が発生した(国土交通省発表)。これにより多くの人的被害や住宅被害が出た。3県で8人が死亡したほか、11都県で79人が重軽傷を負った。住宅は、全・半壊が4県で3926棟、床上浸水が10県で3147棟などの被害が出た。急な増水で住宅に取り残された人らがヘリコプターやボートで救出されるなど、消防隊員らによって救助された人は3日間で2260人に上った(消防庁発表)。また、停電や断水が起きたほか、鉄道の運休や高速道路の閉鎖など交通機関にも影響が出た。
(原田英美 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報