鴫立沢(読み)シギタツサワ

デジタル大辞泉 「鴫立沢」の意味・読み・例文・類語

しぎたつさわ〔しぎたつさは〕【鴫立沢】

神奈川県中郡大磯町西部の渓流。名は西行の歌「心なき身にもあはれはしられけりしぎたつ沢の秋の夕暮」に由来する。そば鴫立庵でんりゅうあんがある。[歌枕

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精選版 日本国語大辞典 「鴫立沢」の意味・読み・例文・類語

しぎたつさわしぎたつさは【鴫立沢】

  1. 鴫の飛び立つ水辺。特に西行物語で、西行が「心なき身にもあはれはしられけり鴫立つ沢の秋の夕暮」とよんだと伝える神奈川県中郡大磯町小磯の付近名所として知られた。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「大磯のまちを打過、鴫立沢(シギタツサハ)にいたり文覚上人が刀作ときこえし西行の像にむかひて」(出典滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)初)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鴫立沢」の意味・わかりやすい解説

鴫立沢
しぎたつさわ

神奈川県中南部大磯町(おおいそまち)の旧宿場町の西端の海岸段丘を流下する渓流。小流であるが段丘崖(がい)を緩く懸谷(けんこく)状に流下し景勝地をなす。その西縁台上に、ここに立ち寄って「心なき身にもあはれは知られけり鴫立沢の秋の夕暮」と詠んだ西行(さいぎょう)を記念して鴫立庵(あん)が設けられている。元禄(げんろく)年間(1688~1704)には江戸の大淀三千風(おおよどみちかぜ)が止住して庵主となり、歌塾を開いていた。東海道を上下する歌人、風流人の訪れが多く、数々の秀歌が生まれ、いまもそれを刻んだいくつもの歌碑がみられる。その後、代々俳人を庵主に迎え庵はよく守り続けられ、第二次世界大戦後は歌道研修道場となり、広く京浜地方からも歌人たちが集まり、関東歌壇の一拠点となっている。現在、庭内には古い庵室のほか、西行像を安置する円位(えんい)堂や法虎(ほうこ)堂があり、3月には西行祭が行われる。JR東海道本線大磯駅から徒歩10分。

[浅香幸雄]

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