鶏を割くになんぞ牛刀を用いん(読み)にわとりをさくになんぞぎゅうとうをもちいん

精選版 日本国語大辞典 の解説

にわとり【鶏】 を 割(さ)くになんぞ=牛刀(ぎゅうとう)[=牛(うし)の刀(かたな)]を用(もち)いん

  1. ( 「論語‐陽貨」の「子之武城、聞弦歌之声。夫子莞爾而笑曰、割雞焉用牛刀」による。鶏を料理するのに、牛を切るような大きな包丁を使う必要はないの意から ) 小事を処理するのに、大人物や大げさな方法を用いる必要はない。適用のしかたがまちがっていることのたとえ。牛刀をもって鶏を割く。
    1. [初出の実例]「此使面白い姫一人取かへすに、名有(ある)侍を用るは、鶏を裂に牛の刀」(出典浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)六)

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故事成語を知る辞典 の解説

鶏を割くになんぞ牛刀を用いん

小さなことを処理するのに、有能な人物や大げさな方法を用いる必要はない、ということのたとえ。

[使用例] 鶏を割くに何ぞ牛刀を用いん。虫けら如き汝をあいに闘うは此アンテアスのおれであるが[内田魯庵*社会百面相|1902]

[使用例] 最大最強の敵であるアメリカ機動艦隊をさしおいて、牛刀を以て鶏を割くような任務にばかり、奔命させられているのではないか[阿川弘之山本五十六|1965]

[由来] 「論語よう」に見える、孔子のことばから。孔子が、ある小さな町の長官をしている、ゆうという弟子を訪ねたときのこと。町中から、琴の音と歌声が聞こえてきました。調和を重んじる音楽は、人間性を磨く方法の一つとして、孔子が重視しているもの。ただ、こんな小さな町でそれを実践するのはちょっと大げさではないかと考えた孔子は、にっこり笑って言いました。「鶏を割くにいずくんぞ牛刀を用いん(鶏を料理するのに、牛の解体用の大きな包丁を使う必要が、あるのかな)」。すると子游は、「どんな人でも、人間性を磨けばそれぞれの効果があります」と反論。孔子は、「今のは冗談だよ」と前言を取り消したのでした。

[解説] ❶孔子が弟子にやりこめられるという、ほほえましいエピソード。孔子の真意は、「子游のような有能な人材は、こんな小さな町にはもったいない」ということだった、という解釈もあります。❷才能のある人物がつまらない仕事をさせられるのを嘆く場合に、よく使われます。また、大げさな方法を使って、ことを荒立てるのを嫌う場合に用いられることもあります。

〔異形〕牛刀を以て鶏を割く。

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ことわざを知る辞典 の解説

鶏を割くになんぞ牛刀を用いん

鶏を料理するのに、牛を切るような大きな包丁を使う必要はない。小事を処理するのに、大人物や大げさな方法を用いる必要はない。物の使い道のまちがっていることのたとえ。牛刀を以て鶏を割く。

[解説] 「論語―陽貨」にあることば。

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