黒潮大蛇行(読み)クロシオダイダコウ

デジタル大辞泉 「黒潮大蛇行」の意味・読み・例文・類語

くろしお‐だいだこう〔くろしほダイダカウ〕【黒潮大蛇行】

日本の本州南岸を流れる黒潮が紀伊半島沖で大きく南に蛇行する現象。本州南岸との間に反時計回りに循環する冷水塊が発生し、漁業影響を与えることが知られる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黒潮大蛇行」の意味・わかりやすい解説

黒潮大蛇行
くろしおだいだこう

日本南岸を東進する黒潮が,紀伊半島沖から沿岸を離れ,大きく迂回し,大蛇行する現象をいう。この現象は大西洋の黒潮といわれる湾流 (ガルフストリーム) にはみられない黒潮特有の現象で,宇田道隆によって 1930年代に発見された。かつては,この現象を黒潮異変と呼んだが,近年,黒潮が2つの安定した流路をとるということがわかった。その1つが大蛇行 (蛇行型の流路) で,もう1つが四国沖から沿岸に沿って房総半島に向う直進型の流路をとるものである。この2つの流路はそれぞれ数年間は安定している。黒潮が蛇行するときは必ず紀伊半島沖あるいは遠州灘沖に大冷水塊を伴う。冷水塊は大きい場合には,半径が 200kmにも達する。この冷水塊は反時計回りに循環していて,最近の観測では 2500~3000kmの深さでも,その循環が認められている。この黒潮大蛇行は大冷水塊を伴うため,沿岸・沖合漁業に大きな影響を与え,カツオマグロ漁場がはるか沖合いに移る。冷水塊域上に高気圧が停滞し,低気圧の経路が北にそれるという気象への影響も指摘されている。発生機構についてはまだ究明されていないが,伊豆海嶺などの日本南岸の海底地形の影響と,北太平洋規模の気象変動が大きく関与している可能性が強い。

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知恵蔵mini 「黒潮大蛇行」の解説

黒潮大蛇行

通常は四国・本州南岸を沿うように流れる黒潮が、紀伊半島沖で離岸し、大きく迂回しながら房総半島に向かって流れる現象。「潮岬で黒潮が安定して離岸していること」「東海沖(東経136〜140度)での黒潮流路の最南下点が北緯32度より安定して南に位置していること」の二つの条件を満たすと、黒潮大蛇行と判断される。統計を取り始めた1965年から2017年までに6回発生しており、年単位で継続することもある。大蛇行が起こると、魚の生息域が変化して漁業に影響が出る可能性があるほか、潮位の上昇により高潮などの被害が発生しやすくなることから、気象庁海上保安庁が注意を呼びかけている。

(2017-10-3)

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海の事典 「黒潮大蛇行」の解説

黒潮大蛇行

日本南岸の黒潮は、九州南端沖からまっすぐ沿岸沿いに流れる場合と、紀州沖ないし遠州灘沖で南東に転じ、遠州灘沖に発生した大冷水塊の沖合いを迂回して伊 豆諸島付近で再び接岸する場合がある。この蛇行現象を黒潮大蛇行と呼ぶ。大蛇行は黒潮特有の現象で、湾流等他の西岸境界流に見られない。この蛇行現象は異 常現象と考えられたことがあるが、この海域で黒潮のとり得る二つの安定流路の一つであることが示されている。 (永田)

出典 (財)日本水路協会 海洋情報研究センター海の事典について 情報

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