海底地形(読み)かいていちけい(英語表記)submarine topography

改訂新版 世界大百科事典 「海底地形」の意味・わかりやすい解説

海底地形 (かいていちけい)
submarine topography

地形とは地表面の起伏,形態のことで,海水面下にある地形を海底地形という。地形は地球内部に起因する内力(構造運動,火山活動など)により生じ,起伏を大にする。一方,太陽エネルギーと地球重力に起因する外力(浸食,堆積)により地形は破壊され起伏を減少していく。陸上では河川,波浪,氷河,風などの浸食と堆積の作用により複雑な地形を形成するが,海底ではいったん生じた地形は,浅海以外ではあまり浸食を受けず,むしろ緩慢な堆積作用によって埋積されていくだけであるから,保存されやすい。この意味で海底地形は構造地形と考えられることが多い。海底地形は深海底と大陸縁辺部の地形に大別される。

プレートテクトニクスの考え方によると,構造運動はプレート運動によって起きる。地球内部は地殻,マントル,核に大別される。地殻は大陸では比較的比重の小さい花コウ岩質層とその下の玄武岩質層からなり,厚さは平均33kmである。海洋底では花コウ岩質層を欠き,薄い堆積層の下に玄武岩質層があって,厚さは平均7km,比重は大きい。マントルは地下60~90kmを境にして,上部は硬いリソスフェア,下部は軟らかいアセノスフェアに分けられる。プレートとはこの地殻とリソスフェアを合わせた部分のことで,海洋底では海洋地殻を有する海洋プレート,大陸地域では大陸地殻を有する大陸プレートとなっている。大陸プレートはアセノスフェアより軽く,海洋プレートはそれよりやや重く不安定な状態でアセノスフェアの上に浮かんでいると考えられる。地球表面はこうしたプレートによって敷石をしきつめたようにおおわれている。これらプレートの運動によってプレート境界に起こる相対的運動は,プレート同士が離れるか,ぶつかるか,すれ違うかの3種類に限られる。

 離れるプレート境界ではアセノスフェアが海底近くまで上昇し,中央海嶺を形成する。中央海嶺は,北極海,大西洋,インド洋などの大洋のほぼ中央に連なる海底の大山脈で,太平洋では南東部に走る東太平洋海膨となっている。中央海嶺下のアセノスフェアは圧力低下のためにマグマを生じ,海嶺中軸部では火山活動や地下での貫入が起こる。アイスランドは中央海嶺が海面上に現れた例である。このほか太平洋,大西洋の中軸部では,海底火山活動,熱水活動が知られている。これらの火成活動によって生じる玄武岩が冷却して新しいプレートを形成していく。新しく生産されたプレートは中央海嶺から離れていくにしたがい冷却して沈降し,広大で低平な大洋底の地形を形成する。生まれたばかりのプレートの表面は小起伏に富むが,しだいに堆積物でおおわれ,平たんになっていく。中央海嶺の山頂にはしばしば中軸谷という地溝状凹地が存在する。大西洋中央海嶺のようにプレートの分離速度が遅い中央海嶺は,地形が急峻で中軸谷を有する。分離速度の速い東太平洋海膨などでは,地形はゆるく膨らんだ形を呈し,中軸谷もない。

 大洋底を形成するプレートは中央海嶺から遠ざかるにつれ,生成年代の古いプレートとなり,冷却につれ,その底面にアセノスフェアから溶融物質が固化し付着してくるので,厚さを増大する。海洋プレートはアセノスフェアより低温で比重はやや大きいと考えられているので,厚くなると重力均衡を保つために沈降し深くなっていく。海洋プレートは中央海嶺とは反対側の縁辺で大陸プレートとぶつかりアセノスフェアの中へ沈み込む。

 ぶつかるプレート境界(サブダクション帯,沈み込み帯と呼ぶ)では深くて両側に急斜面をもつ細長い凹みである海溝が生じる。沈み込んだプレートはアセノスフェア深部で溶融し,ふたたびアセノスフェアになる。この過程で海溝の陸側には火山活動や地震活動が起きる。海洋プレートが沈み込むとき上に積もっている堆積層は沈み込むことができず,海溝陸側斜面の基部でかきとられて陸側の地塊に付加され,複雑な地形の斜面を形成する所もある。また海溝の海側にはプレートの曲りに対応した膨らみである海溝周縁隆起帯(マージナル・スウェルmarginal swell)の地形が生じる。海溝の陸側には西太平洋の多くの海溝に見られるように火山列を含む島弧が存在する。島弧の火山は沈み込むプレートと大陸プレートとの間のシアによる熱エネルギーの発生とマグマの形成によるものである。

 海溝に伴う火山列のさらに内側では,西太平洋のように縁海marginal seaがある場合と南北アメリカ西岸のように海岸に脊梁山脈が迫っており縁海を欠く場合とがある。縁海の成因は多様である。スンダ陸棚は大陸地殻を有する浅海で,本質的には大陸プレートである。海洋地殻を有する縁海にもいろいろあって,マリアナ海溝背後のトラフは地殻熱流量が高く,地形は起伏が激しく堆積物がほとんどなく,水深は比較的浅くて地磁気異常の年代は若いので,中央海嶺と同様,現在新しく海底が形成されつつある縁海だと考えられている。一方,日本海盆や千島海盆は地殻熱流量が高く,かつては活動的な縁海だと考えられていたが,水深が深く,堆積物も厚くて地形は平たんであり,ここで発生する地震は,展張よりはむしろ圧縮の地震であることなどから,現在では拡大を停止した縁海であると考えられている。また,ベーリング海は中生代の地磁気異常を有する非常に古い海底から成るが,厚い堆積物でおおわれ,浅く平たんな地形を有しており,古太平洋の海底の一部を取り込むような形でアリューシャン海溝が形成されたと考えられている。

 海溝そのものについても詳細にみれば地形は必ずしも単純ではない。これは沈み込む海洋プレートの上盤にあたる大陸プレートの相対的運動が場所によって違っているためであるとする説がある。またこれらの差異をプレート沈み込みの時間的変化としてとらえる考え方もある。

 すれ違うプレート境界ではプレートの生産も消費も起こらず,両側のプレートがこすれ合って地震帯が生じる。これがトランスフォーム断層で,その端はどこかで中央海嶺や海溝などの他のプレート境界とつながっている。海嶺と海嶺をつなぐトランスフォーム断層は中央海嶺に普遍的にみられる。中央海嶺の中軸部は断層で切られ地形的なずれを生じているが,ここで起こる地震は地形的ずれとは逆方向のずれによって起こっている。これはプレートが離れていくという考え方によって説明できる。プレートが生産され離れていくにしたがい,トランスフォーム断層の痕跡は大洋底に伸び出し断裂帯を形成する。断裂帯は海山,トラフ,海底崖などを伴うきわめて細長い地帯で,プレート運動の方向を示す過去の構造帯であり,地震活動はみられない。

 海洋プレートの表面にあたる大洋底は,古いものほど水深が深くかつ堆積物におおわれ平たん化されているが,その中に多くの海山がある。海山は孤立するほぼ円錐状の高まりで,海底火山と考えられる。海底火山は海面上にまで達すると火山島となるが,火山活動が終了すると波食をうけ,山頂は平たん化されサンゴ礁が形成される。火山体が沈降を続けるとサンゴ礁は環礁となっていく。また,あるものはそのまま沈水してギヨー平頂海山)となる。これら海底火山の成因およびその後の沈降という機構には,まだ解明されていない点が多い。

海底地形のコラム・用語解説

【海底地形の用語】

太字の英名は,1979年 GEBCO(General Bathymetric Charts of Oceansの略で,国際水路局刊行の全世界の大洋水深総図)委員会で正式に採決された名称。ほかの英名は文献中よく使われる同義語。
鞍部 saddle
海嶺の中または近接する海山の間にあり,鞍状をなす低い部分。
エプロン斜面 apron/archipelagic apron
とくに島嶼や海山の群れのまわりにみられる緩い斜面で,ふつう滑らかな海底面を有する。
海脚 spur
ある大きな地形から伸び出す従的な高まり,海嶺または海膨。
海丘 knoll
丸い形をした比較的小さい孤立した高まり。
海穴 hole
海底の小さな凹み。
海溝 trench
長く狭くとくに非常に深くかつ非対称な海底の凹みで,比較的急峻な斜面を有する。
海谷 valley/submarine valley
比較的浅く幅広い凹みで,その底はふつう連続的な傾斜を示す。この用語は大部分にわたって峡谷状の特徴を有する地形に対しては一般に使用されない。
海山 seamount
大きな孤立した高まりで,円錐形をなすのが特徴。
海山列 seamount chain
一線に並ぶいくつかの海山。
海台 plateau
かなりの広さを有する平たんないしはほぼ平たんな地域で,その一方またはそれ以上の方向が急に深くなっているもの。
海段 terrace/bench/deep sea terrace
比較的平たんで,水平または緩く傾斜する表面を有し,しばしば長くかつ狭い。一方は急な上り斜面で,他方は急な下り斜面で境されている。
海底崖 escarpment/scarp
細長くかつ比較的急峻な斜面で,平たんなあるいは緩く傾斜する地域を分けているもの。
海底谷 canyon/submarine canyon
比較的狭く深い凹みで,両側は急峻で,底は連続的な傾斜を有する。
海底扇状地 fan/cone/deep sea fan/deep sea cone/submarine fan/submarine cone
海底または海底谷の集りの末端から外側へ規則的に傾斜していく,比較的滑らかな地形。
海底堤防 levee
海底谷,海谷またはチャンネルを境する堤。
海峰 peak
顕著な高まりで,尖っているかまたは頂上がごく限られた広さしかないもの。
海膨 rise
海底から緩くかつふつうは海底が滑らかに盛り上がった幅広い高まり。海嶺の(3)の定義と同義語。
海盆 basin
平面的にみて,おおよそ丸い凹みで,大きさはさまざまである。
海嶺 ridge
(1)急峻な斜面を有する細長い高まり。(2)細長い高まりで,しばしば大洋の海盆を分ける。(3)地球的規模をもつ大きな大洋の山系。
海裂 gap/abyssal gap
海嶺または海膨の中の狭い切れ目。
ギヨー tablemount/guyot
平頂海山ともいう。比較的滑らかな平らな頂上をもつ海山。
コンチネンタルライズ continental rise
大洋の深さから大陸斜面のふもとに向かって上っていく緩やかな斜面。
山地 mountain
海嶺と海山の大きい複雑な集り。
舟状海盆
トラフを参照。
周辺凹地 moat/sea moat
モートともいう。多くの海山,島その他孤立した高まりのふもとにある環状の凹みで,連続しないこともある。
reef
海面か海面近くにある岩で,海上航行の危険となりうるもの。
小丘 hill
海丘ほど高くない小さな孤立した高まり。
シル sill
海盆を分ける海裂または鞍部の低い部分。
深海小丘地域 abyssal hills
海底の小さな高まりがある地域。
深海平原 abyssal plain/plain
深海にあって,平たんか緩く傾斜するか,またはほぼ水平な地域。
瀬 shoal
沖合にある未固結物質からなる海上航行に危険な場所。
尖礁 pinnacle
高い塔状か,尖った柱状の岩やサンゴをいい,頂上は孤立しているか嶺をなしている。
bank
バンクともいう。海底の高まりで,その上の水深は比較的浅いが,ふつうは海上航行の安全には十分な深さを有する。
大陸縁辺部 continental margin
大陸と深海平原または深海底を分ける地帯で,ふつう大陸棚,大陸斜面,コンチネンタルライズから成る。
大陸境界地 borderland/continental borderland
大陸に隣接する地域で,ふつうは大陸棚が占める地域か大陸棚に隣接する地域にあり,典型的な大陸棚よりはかなり深く,非常に不規則な起伏を有するもの。
大陸斜面 slope/continental slope/island slope
大陸棚外縁からコンチネンタルライズの始まるところまで,あるいは傾斜の一般的減少が起こる地点までの斜面。
大陸棚 shelf/continental shelf/island shelf/insular shelf
大陸に隣接する(あるいは島の周囲)地帯で,低潮線から始まり,大洋の深所に向かって傾斜の著しい増加が起こる所までをいう。
大陸棚外縁 shelf edge/shelf break
傾斜の著しい増加が起こる大陸棚の外縁の狭い地帯。
断裂帯 fracture zone
急峻な斜面または非対称断面を有する海嶺,舟状海盆または海底崖によって特徴づけられる不規則な海底地形を有する非常に長い直線状の地帯。
地形区 province
周囲の地域と著しい対照的特徴をもつ一群の類似した地形によって区別される地域。
チャンネル seachannel/channel
海底扇状地または深海平原にみられる連続的に傾斜する細長い凹みで,通常片側または両側を堤防によって境されている。
中軸谷 median valley/rift/rift valley
中央海嶺系の軸部の凹み。
トラフ trough
舟状海盆ともいう。海底の長い凹みで,特徴として平たんな底と急峻な斜面を有し,ふつう海溝よりは浅いもの。
バンク
堆を参照。
平頂海山
ギヨーを参照。
モート
周辺凹地を参照。
執筆者:

大陸(または島)の周辺には浅く平たんな海底があり,その外縁で急に傾斜を増大し深海に達している。この平たん部が大陸棚,急斜面が大陸斜面,傾斜変化部が大陸棚外縁である。大陸斜面下部には大陸性堆積物が大洋底に向かって広がっている階段状あるいは緩斜面の地形があり,コンチネンタルライズといわれる。海溝がある場合は,大陸斜面は海溝斜面に移り変わっており,コンチネンタルライズは存在しない。海岸からコンチネンタルライズまたは海溝底までを大陸縁辺部という。

 大陸棚外縁の深さは30~600mにわたるが,氷河浸食地域を除くと,世界的にみて約140mでかなり一様である。また大陸棚上には旧海岸線を示す不規則な堆積物の分布,沈水を示す溺れ谷,埋積谷,海底段丘,沈水三角州などの地形が存在している。第四紀は厚い大陸氷河が発達した氷河時代でもあった。この氷河の消長に伴い,氷期には氷河が発達し海水面が低下し,間氷期には海水面が上昇した。大陸棚はこの海水面昇降に伴う浸食と堆積を通じて形成された地形であるが,とくに大陸棚外縁は,最後のかつ最大の海水面低下を起こしたウルム氷期につくられたと考えられる。しかし詳しくみれば,大陸棚にはさまざまの生い立ちをもつものがある。内湾や内海の大陸棚は低海水面時代の河谷末端部や沖積平野が沈水したもので,湾底には溺れ谷や埋積谷が存在し,泥質堆積物や河口三角州が発達している。外洋に面し陸源堆積物の供給が少ない所では低水面時代の浸食地形がそのまま沈水した大陸棚が形成される。また内部の地質構造からみると,沈降地域に堆積層が積もってできる大陸棚,外縁部の地形的隆起によって堆積物がせき止められてできる広い大陸棚,断層や撓曲(とうきよく)によって外縁部が形成される大陸棚などさまざまなタイプがある。

 大陸棚外縁から沖はふつうは大陸斜面になり深海底に達するが,なかには大陸棚に接して通常の大陸棚よりかなり深い所で山や谷など不規則な起伏がみられる場合がある。これが大陸境界地である。大陸棚から大陸境界地にいたる海底は,海岸地域の陸上の地質構造ときわめて類似しており,その延長と考えられる地域である。すなわち陸上部分は河川の浸食をうけ,大陸棚の部分は海水面昇降のために平たん化されたが,海水面変化より深い所にあった部分は構造地形をそのまま現在にまで残した大陸境界地を形成したものである。

 大陸斜面も単調な斜面ではなく谷や平たん面(段丘)に特徴づけられている。大陸斜面上の海底谷は混濁流作用により海底で浸食された地形であると考えられる。大陸斜面上にたまった堆積物は不安定であり,何かの衝撃を受けるとなだれや地すべりを起こして斜面を下り,凹みに集中して泥流となって流れる。この泥流が混濁流で,その浸食によって谷ができる。混濁流は大陸斜面のふもと,あるいは斜面途中の凹みにいたって堆積し,海底扇状地や深海平たん面をつくる。これらの堆積物は沖合型の粘土層と浅海起源の砂層からなる砂泥互層を形成する。砂層は下位から上位へ細粒になっていく分級組織を有し,また浅海性の底生有孔虫を含む。海底扇状地の沖はさらに平らなすそ野である深海平原になっていく。海底扇状地や深海平原の表面には両岸に自然堤防をもつ深海チャンネルがみられる。深海チャンネルは混濁流が海底谷末端に達すると広がっていくつかの流路に分かれ,これまで懸濁してきた堆積物をその流路沿いに沈殿していくために生じた地形である。深海チャンネルは大西洋,アラスカ湾,日本海などに大規模なものが知られている。コンチネンタルライズは大西洋両側の大陸斜面下部によく発達するすそ野状のゆるい斜面である。

 大陸縁辺部には2種ある。同一のプレートに属しているが,一部は大陸地殻,一部は海洋地殻を有するので,大陸縁辺部が同じプレート内にあるもので,これが非活動的大陸縁辺部である。もう一つは大陸縁辺が異なるプレートの境界をなすもので,海溝を有する活動的大陸縁辺部である。これについては前に述べた。大西洋両側は非活動的大陸縁辺部の典型である。ヨーロッパと北アメリカは大西洋岸の地質が著しく似ており,元来は一続きの大陸であったとされているが,ジュラ紀に割れて開き始めた。両大陸が離れるにしたがい大西洋には中央海嶺が形成され,その両側に新しい海洋プレートが成長してくると,最初の割れ目にできた古い海洋プレートは時代とともに沈降し,これに伴って大陸縁辺には厚い連続的な浅海性堆積物が形成された。この意味で大西洋の非活動的大陸縁辺部は,かつての割れ目をつくっていた断層崖のなごりではあるが,厚い浅海堆積物で修飾されているといえよう。この堆積物の中でも硬い砂岩や基盤の変成岩類の層準は海のほうへ伸び出して,1ないし2段の段丘状の張出しをつくっている。コンチネンタルライズは元来この段丘地形を指すことばであったが,段丘地形の多くはすでに埋没され大陸斜面から深海平原にいたるゆるやかなすそ野状斜面となっており,この斜面をコンチネンタルライズというようになっている。

 以上のように海底地形はプレートテクトニクスの考え方によって説明されるが,場所によって必ずしも一様な地形があるわけではない。これを海洋の進化という時間的変化として説明することもできる。すなわち原大陸が割れ,現在東アフリカに見られるような大地溝帯を生じる。この段階が進むと紅海,アデン湾のような幼年期の海洋ができる。ここでも大陸斜面には厚い浅海性堆積物があり,地溝の拡大とともに大陸縁辺部の沈降が起こっていることを示している。大西洋や北極海は,プレートが分離し,中央海嶺が発達した壮年期の海洋である。さらに次の段階は,大陸縁辺部に海溝を生じプレートの沈み込みと消費が起こる太平洋のような老年期の海洋である。海溝を生じるとプレート運動は速くなり,中央海嶺でのプレート生産も速くなるが,それ以上にプレート消費が速くなり,遂には海洋全体としては縮小に向かい,最後には両側の大陸が衝突してヒマラヤ山脈のような造山帯となって海洋は進化を終える。地中海,カスピ海,黒海などは,その消滅期にある海洋である。ただし消滅期にいたる過程では,中央海嶺は移動し,消滅し,また新しく生まれて,プレート運動の再配列を繰り返すのであろう。
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百科事典マイペディア 「海底地形」の意味・わかりやすい解説

海底地形【かいていちけい】

海底はふつう堆積の場であり堆積地形が卓越し,同時に海底浸食が微弱な結果,地殻運動による構造地形がそのまま海底地形として保存されている。海底の深さの面積比は,200m以浅が全海洋の7.6%,200〜2000mが8.5%,2000〜6000mが82.7%,6000m以深が1.2%,平均は3795mである。これを大陸縁辺,大洋海盆,海溝と島弧の3地形区に大別する。(1)大陸縁辺区には大陸棚,大陸斜面(大陸棚の外縁から深海へ向かう斜面),大陸縁辺地域(大陸棚よりかなり深く不規則な凹凸のある地域),海底扇状地(大陸斜面の麓にあるなめらかな緩斜面)等が含まれ,堆(たい)(しょう),海底谷海底段丘等がこれを修飾する。(2)大洋海盆区は海嶺(かいれい),海膨,海山列があり小海盆に分かれる。大洋海盆には深海平原(表面がほぼ水平でなめらかな海底),深海海丘(比高1km以下の小丘)区域があり,海山ギヨー,海台(頂部が平らで著しく広い高まりで比高200m以上のもの)がこれらをいろどる。海山群や群島のまわりにはエプロン斜面という緩斜面がある。大洋の中央にあって全世界に連続する大洋中央海嶺はときに中央地溝を伴う山頂部と階段状地形を有する両翼からなり,翼部には中央海嶺と直交する断裂帯(海山,急斜面を有する海嶺,崖,細長い凹地等の不規則な地形が続く直線的地帯)がある。(3)海溝島弧(弧状列島)は相伴い,火山内弧,トラフ(舟状海盆),非火山性外弧,大陸斜面,海溝斜面,海溝底という配列がある。
→関連項目海洋

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海底地形」の意味・わかりやすい解説

海底地形
かいていちけい

海底の起伏などの形態。一般的にいえば、地球内部に起因する内力(構造運動)によって形成された構造地形が、太陽エネルギーと重力に起因する外力(侵食と堆積(たいせき)の作用)によって変形されたものが地形である。陸上では河川、氷河、波、風などで著しく侵食されるが、海底ではいったん生じた構造地形は侵食されずに保たれ、緩慢な堆積作用によって埋積されてゆく。

 地球の構造運動は地殻深部のプレート運動に起因する。マントル層の上にのっているプレートが移動するとき、プレートと他のプレートの境界におこる相対運動は、互いにぶつかるか、離れるか、擦れ違うかに分かれる。離れていくプレート境界ではマントル物質が地殻が薄くなった海底近くまで上昇し、その熱のために海底が膨らんで中央海嶺(かいれい)を形成する。

 中央海嶺は、北極海、大西洋、インド洋、南大洋(南極海)では大洋のほぼ中央を走る急峻(きゅうしゅん)な海底山脈をなし、太平洋では南東部に幅広く膨らんだ海底山脈となっている。中央海嶺ではマグマが噴出したり地下に貫入し冷却して新しいプレートがつくられる。新しいプレートは中央海嶺から遠ざかるにつれ冷却し収縮して沈下し、広大で低平な大洋底を形成するが、やがて堆積物で覆われ平坦(へいたん)化されていく。

 ぶつかるプレート境界では、一方のプレートは他のプレートの下へ沈み込んでいく。ここでは深くて両側に急斜面をもつ細長いへこみである海溝(かいこう)が生じる。沈み込んだプレートは深部で溶融し、ふたたびマントル物質になる。擦れ違う境界ではプレートの生産も消費もおこらず、ただこすれ合って地震帯を生じる。これがトランスフォーム断層で、その両端は中央海嶺か海溝かにつながっている。海嶺と海嶺をつなぐトランスフォーム断層では、プレートが離れていくにしたがって断層の痕跡(こんせき)が大洋底に伸び出して、断裂帯の地形を形成していく。断裂帯は海山(海底の山)、トラフtrough(海溝ほど急峻でないへこみ)、海底崖(がい)などを伴うきわめて細長い直線的な地帯である。北極海、大西洋は海溝がなく、プレート運動の速度は遅い。インド洋は一部に海溝を有する。

 これらの大洋の中央海嶺は拡大速度が遅く、山頂には中軸谷という地溝状凹地がある。一方、南大洋、太平洋では海溝でプレートの沈み込みがあり、拡大速度が速く、中央海嶺は膨らんだ海膨の地形を呈し、中軸谷もみられない。海溝では島弧、火山活動、深発地震などが伴うが、個々の海溝の地形などもろもろの地学現象には差異がある。これをプレート沈み込みの時間的進化とみる説、陸側と海側のプレートの相対的な動きの違いによって説明する説とがある。

[佐藤任弘]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「海底地形」の意味・わかりやすい解説

海底地形
かいていちけい
submarine topography

海底は,地形的に大陸縁辺地域,大洋底 (深海底 ) ,中央海嶺に3区分される。この分け方は地質構造も反映している。面積では大洋底が全体の約3分の2を占める。大陸縁辺部は大陸から大洋底までの範囲をさし,大陸棚大陸斜面,コンチネンタルライズ (大陸斜面より傾斜がゆるいなめらかな地域で,一般に大陸斜面のふもとにあり,大洋底との漸移帯) に分けられる。太平洋縁辺では,コンチネンタルライズの代りに海溝が存在するところが多い。海溝は成因的に弧状列島と一括して考えられるのが普通で,大陸縁辺部に含まれる。プレートテクトニクス説では,海溝は海洋底のもぐり込み口である。海底谷の多くは大陸棚,大陸斜面に存在する。大洋底は,深海平原と深海丘域とから成る。世界の大洋の大部分を占める水深 4000~6000mの海底が大洋底で,多くは堆積物によって平坦な表面をもつ。

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