鼻中隔弯曲症(読み)びちゅうかくわんきょくしょう(英語表記)Septal Deviation

六訂版 家庭医学大全科 「鼻中隔弯曲症」の解説

鼻中隔弯曲症
びちゅうかくわんきょくしょう
Deviated nasal septum
(鼻の病気)

どんな病気か

 鼻中隔左右鼻腔を分ける壁で、軟骨と骨で形成されていて、これらの両面は鼻の粘膜でおおわれています。

 この鼻中隔がゆがんで左右のどちらかに突出すると、凸側は鼻腔が狭くなり、凹側は広くなります。そのため、鼻のなかでの空気の流れが影響を受け、鼻づまりが生じます。これが鼻中隔弯曲症です。

原因は何か

 鼻中隔は、小児期にはほぼまっすぐです。思春期になると鼻中隔を形成する軟骨が急激に大きくなり、鼻を高くするように発達します。しかし、頭蓋骨や顔面骨はそれほど発達しないため、軟骨がゆがんだり、骨と軟骨の接合部に変形を来します。その結果、鼻中隔は左右のどちらかに突出したような形態をとることになります。その程度は個人によってさまざまですが、女性よりも男性に多いとされています。

症状の現れ方

 最も代表的な症状は鼻づまり(鼻閉(びへい))です。一般に、鼻づまりは鼻腔が狭い側(凸側)に強いのですが、広い側(凹側)でも生じることがあります。これは、凹側の鼻甲介(びこうかい)(鼻腔にある粘膜におおわれた骨の突起)の粘膜が肥厚し、空気の通りが悪くなるためです。

 また、鼻中隔弯曲症はいびきの原因にもなります。鼻づまりが高度の場合は睡眠呼吸障害を起こすこともあります。さらに、鼻内の気流の乱れのため、粘膜に炎症を起こせば副鼻腔炎(ふくびくうえん)滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)も引き起こすことがあります。鼻出血も、凸側の鼻粘膜吸気で常に刺激を受けるため起こりやすくなります。

検査と診断

 前鼻鏡で左右の鼻腔のなかを観察し、前方の鼻中隔の弯曲の程度を調べます。後方の弯曲は内視鏡を使って観察します。このように視診で診断は可能ですが、さらにその弯曲の程度と部位と、合併する副鼻腔炎の有無をチェックするためには、副鼻腔CT検査が非常に有用です(図2)。

治療の方法

 鼻中隔弯曲症のため、鼻づまりが高度の場合、いびきや睡眠呼吸障害の原因となる場合、さらに副鼻腔炎滲出性中耳炎の原因となる場合、あるいはアレルギー性鼻炎を伴ってさらに高度の鼻づまりを引き起こしている場合は、鼻中隔矯正術を行います。これは、曲がっている鼻中隔の軟骨と骨を除去する手術です。その結果、左右の鼻腔の隔壁の一部は粘膜のみとなります。

病気に気づいたらどうする

 鼻中隔の弯曲があるかどうかは、耳鼻咽喉科医が診なければわかりません。鼻づまりを引き起こす病気は非常にたくさんあります。長く鼻づまりが続く場合は、耳鼻咽喉科を受診することが必要です。

飯野 ゆき子, 太田 康


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「鼻中隔弯曲症」の解説

びちゅうかくわんきょくしょう【鼻中隔弯曲症 Septal Deviation】

[どんな病気か]
 鼻腔(びくう)を左右に分ける中仕切りの役割をはたしているのが鼻中隔です。鼻中隔の構成にあずかる骨や軟骨(なんこつ)が左右どちらかへ弯曲していたり、突出(とっしゅつ)していたりするのを鼻中隔弯曲と呼びます。
 成人の場合、鼻中隔の90%は多少とも弯曲しているものですが、曲がっているものがすべて治療の対象になるわけではありません。弯曲のために、鼻閉(びへい)(鼻づまり)や頭痛その他の症状が現われたときに、鼻中隔弯曲症として治療の対象となります。
[症状]
 鼻閉(鼻づまり)、頭重感(ずじゅうかん)があります。
 鼻炎(びえん)や副鼻腔炎(ふくびくうえん)を合併してくると、鼻汁過多(びじゅうかた)、後鼻漏(こうびろう)(鼻汁がのどのほうにおりる)、さらには鼻出血(びしゅっけつ)、嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)などをおこします。そのために、頭痛もおこるようになります。
 鼻中隔の曲がり具合にはC字状、くの字状のもの、あるいは山脈(さんみゃく)状、ときにはその山の先が尖(とが)って鼻腔(びくう)の側壁(そくへき)にくい込んでいたりします。
[原因]
 鼻中隔は、脳頭蓋(のうずがい)と口蓋(こうがい)(上あご)の間を垂直(すいちょく)に支える板状の柱でもあります。支えとしての位置にありながら、鼻中隔自身が思春期にとくに発育が進むので、周囲との調和がとれず、鼻中隔自身が曲がってしまうのだという説が有力です。
 このほか、外鼻(がいび)の外傷によって鼻中隔に弯曲を生ずることがあります。
[検査と診断]
 前鼻鏡検査(ぜんびきょうけんさ)で鼻内を十分調べるほか、X線検査や内視鏡(ないしきょう)も用いて診察し、弯曲の全貌(ぜんぼう)を立体的に把握する必要があります。
[治療]
 弯曲による自覚症状があって苦痛をともなうときや、弯曲が副鼻腔炎の直接的または間接的な原因となっていると考えられるときに手術が行なわれます。
 鼻中隔は、骨や軟骨を縦の芯(しん)にして、その左右を粘膜(ねんまく)ではさんだような構造をしています。
 これまでは、曲がっている骨や軟骨を抜き取る手術が行なわれましたが、現在では、摘出した軟骨や骨の曲がりや凹凸を平らにして、再び左右の粘膜の間に挿入する方法(鼻中隔矯正手術(びちゅうかくきょうせいしゅじゅつ))がとられるようになってきました。
 手術で、狭い側の鼻腔の鼻づまりが改善されても、逆に反対側が狭くなっては困ります。常に、鼻中隔自体の曲がりと、鼻腔の壁との間、つまり吸気・呼気の流れる道の左右対称性を考えて、矯正手術または鼻腔の壁(側壁)の手術を総合的に行なう必要があります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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