2016年1月の暴風雪と高波及び大雪(読み)にせんじゅうろくねんいちがつのぼうふうせつとたかなみおよびおおゆき

知恵蔵 の解説

2016年1月の暴風雪と高波及び大雪

2016年1月24日夜半、数十年に1度という強烈な寒波の影響で、西日本各地が記録的な大雪に見舞われた。奄美大島では115年ぶりの積雪沖縄本島も名護市や宜野湾市で観測史上初のみぞれが観測された。翌朝も冷え込みが続き、観測史上最低の気温九州各地で記録され、平野部でも真冬日を記録、多いところでは数十センチメートルの積雪が見られた。
16年1月は暖冬といわれ、沖縄では夏日を記録するなど月の前半では気温が平年を大きく上回る日が続いた。このため、月平均気温は各地とも平年並みかそれ以上となった。ところが、月の後半には冬型気圧配置が強まり寒気が流れ込んだ。1月18日前後に低気圧が本州南岸に沿って東北東に進み、21日にかけて北海道の東で発達した。「平成28年豪雪」などの呼び名はないが、この影響で広い範囲が暴風雪となり、関東甲信越地方の山間部で40センチメートル以上、都心部でも5、6センチメートルの降雪を記録し、北関東では数十万戸が停電するなどして、首都圏に大混乱をもたらした。この混乱も冷めやらぬ23日から25日にかけて、西日本や南西諸島大陸からの強い寒気が流れ込み、九州や沖縄など各地で記録を更新する積雪や最低気温が観測された。
今回の東日本の大雪と、西日本の寒波は異なる二つの気象現象が要因と見られ、これらが連続して起きたことによると考えられている。
先に起きた東日本の大雪は、次のように考えられる。冬季の太平洋東部赤道域の海水温が上昇する気象変動をエルニーニョ現象というが、この影響によって貿易風が弱まり、太平洋西部の海水温が上昇しにくくなり、東アジアでは冷夏・暖冬となりやすいとされる。実際に、16年1月上旬は大陸付近の高気圧が強まったため、冬型気圧配置が長続きせず暖冬となっていた。このため、シベリア気団の張り出しが弱くなり、18日前後には南岸低気圧が日本列島付近を通過して大雪を降らせた。
後で起きた西日本の寒波は、気象庁は次のように説明している。23日前後から気圧配置が典型的な西高東低の冬型に一転し、西日本に寒波が襲来した。その原因は、大陸付近の偏西風が南に蛇行したことによる。このため、北にあった強い寒気が南下し、東シナ海水蒸気を含んだ大気が九州などに大雪をもたらした。
冬場の気温が例年比較的高く、積雪もあまり見られない地域での寒波や積雪は、対応や準備の不足から大きな被害につながりやすい。今回も凍結対策が不十分な水道管が各所で破裂した。また、さほど多くない積雪にもかかわらず、道路が寸断されたり列車や空の便も大きな影響を受けたりした。
東京都心では、数十年ぶりに大雪が降った14年にも、20センチメートル程度の積雪で大混乱した。防災行政についても、こうした異常気象などについての対応が求められる。

(金谷俊秀 ライター/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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