寒波(読み)かんぱ

精選版 日本国語大辞典 「寒波」の意味・読み・例文・類語

かん‐ぱ【寒波】

〘名〙 高緯度にある寒冷な気団が、季節風となって温帯地方などにはいりこみ、いちじるしい寒気をもたらす現象。《季・冬》 〔英和和英地学字彙(1914)〕

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デジタル大辞泉 「寒波」の意味・読み・例文・類語

かん‐ぱ【寒波】

寒気団が温暖な地域に進入し、気温が急激に下がる現象。「寒波到来」 冬》「―急日本は細くなりしまま/青畝
[類語]寒さ寒気かんき寒気さむけ寒冷酷寒極寒厳寒寒い肌寒い薄ら寒い寒寒深深凜凜冷え込むうそ寒い余寒春寒はるさむ春寒しゅんかん寒の戻り冴え返る夜寒冷える底冷え花冷え梅雨寒梅雨冷え

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「寒波」の意味・わかりやすい解説

寒波
かんぱ

おもに冬季の現象で、極または高緯度地方で冷却された空気が、中緯度や低緯度地方の広い範囲に流れ出すこと。寒気流出の始まりは急激で、1日に10℃から20℃も下降し、著しい低温あるいは厳しい寒さをもたらす。寒帯や温帯地方では暴風雪大雪などを伴い、日常生活や交通・運輸、エネルギー消費など社会に与える影響が大きい。小規模な寒気の吹き出しは1日か2日で弱まるが、大規模な寒波は数週間にわたって、波状的に繰り返し強い寒気を吹き出すことから、あるいは波のように広範囲に寒気が広がっていくことから寒波とよばれる。大規模な寒波は上空偏西風の大規模な波動現象と関係が深い。一般に、高緯度と低緯度の大気の温度差が大きくなると上空の偏西風が強まるが、ある限度を越えると、偏西風は南北に大きく蛇行し、寒冷な空気を南方へ、温暖な空気を北方に運ぶことによって、南北の温度差を小さくしようとする性質がある。したがって、中緯度地方のどこかが寒波にみまわれているときは、極または高緯度地方のどこかでは季節はずれの温暖な天候が現れることになる。偏西風の蛇行に伴って、高緯度地方の寒気は偏西風の流れが低緯度に偏ったところ、すなわち気圧の谷に向かって流れ出し、低緯度地方の暖気は偏西風の流れが北に偏った気圧の尾根に向かって北上するが、ユーラシア大陸や北米大陸の東岸の地域は、海陸の分布ヒマラヤロッキーなどの大きな山岳地形の影響で大規模な気圧の谷が発達し、寒波にみまわれやすい地域である。このほか、ヨーロッパでも大規模な気圧の谷が発達することがあるが、これら3地域に大規模な気圧の谷が現れると、世界の主要な大都市地帯が同時に寒波に襲われることになる。冬期に極東・太平洋地域で偏西風の蛇行が大きくなると、シベリア高気圧アリューシャン低気圧が発達し、いわゆる西高東低の気圧配置が強まって、日本は強い寒波にみまわれる。

[能登正之]

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百科事典マイペディア 「寒波」の意味・わかりやすい解説

寒波【かんぱ】

冬季に,低気圧に伴う寒冷前線が急速に移動(たとえば北日本を東へ),前線の後側の寒帯気団(たとえばシベリア気団)の寒冷な空気が温帯域へ進入,気温が急降下する現象。米国では厳密に定義して,24時間内の気温降下量が一定値を上回り,かつ最低気温が一定値を下回るような寒気の流出現象とする。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寒波」の意味・わかりやすい解説

寒波
かんぱ
cold wave

寒気の吹き出しで急激に気温が低くなる現象。日本付近の寒波はシベリア大陸で発達した寒気団による西高東低の気圧型による北西の季節風に伴って起こる。日本海側では雪を伴い,太平洋側では冷たい風により気温が下がる。農業,交通をはじめとする諸産業および社会活動に支障をきたすことが多い。

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知恵蔵 「寒波」の解説

寒波

寒波は、主として冬期、広い地域に2〜3日、またはそれ以上にわたって顕著な気温の低下をもたらすような寒気が到来すること。1812年11月、ナポレオンの軍隊が、寒波の到来でロシアに敗北した史実にちなんで、寒波を冬将軍(general winter)と呼ぶことがある。熱波とは、非常に高温な空気が広い範囲に広がる現象をいい、しばしば干ばつ、山火事の原因となる。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

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とっさの日本語便利帳 「寒波」の解説

寒波

冬期、広い地域に二~三日またはそれ以上にわたって、顕著な低温をもたらす寒気が到来すること。夏期に、非常に高温の空気が広い地域に広がるのが熱波。

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世界大百科事典(旧版)内の寒波の言及

【日本列島】より

…春あらしは,待ち望んだ春の到来を告げる反面,山岳や海の遭難,なだれ,融雪洪水,大火などの災害をもたらす。 寒のもどり春先,日ましに暖かくなる途中で急に寒さがぶり返す現象をいい,早春寒波などと呼ぶこともある。例年,4月6,18,23日ごろは寒のもどりが起こりやすい日(特異日)とされる。…

※「寒波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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