3次元データを基に樹脂や金属などを層状に積み重ねながら立体を作製する装置。型枠を使わずにさまざまな形を短時間で作ることができ、少量生産と大幅なコスト削減が可能になった。デザイン分野をはじめ、医療や自動車、航空機分野などに活用が期待されている。以前は高価だったが、最近は安価な家庭用も販売され、徐々に普及している。
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3D(三次元)のデジタルデータをもとに、立体物を形づくる装置。積層造形装置、三次元プリンターともいう。一般的なプリンターが二次元で紙に印刷するように、三次元の物体を一層一層、積層させながら造形するため、このような名称でよばれる。
3Dプリンターは1980年代に技術開発が進み、実用化されたものだが、当初は取り扱いに特殊な技術が必要であり、専門業者が使う業務用の大型機器が中心であった。近年、改めて注目されたきっかけは、かつては数千万円を超える価格だった3Dプリンターが小型化され、10万円程度の価格で入手できるようになったことにある。2012年にアメリカで刊行された書籍『メイカーズMakers』(クリス・アンダーソンChris Anderson(1961― )著)では、製造に関する知識がなくても、だれもがアイデアを気軽に形にできるという、パーソナルファブリケーション(家内制機械工業)の考え方を提案し、世界的に話題となった。また、アメリカ大統領オバマは2013年の演説で、今後4年間で3Dプリンターやレーザーカッターなどの機器を1000か所の学校に完備し、国をあげて3Dプリンターの関連の技術開発を推進するという政策を打ち出した。これによって、新しいものづくりの革命が起こるという、強い印象を世界に与えた。アメリカではものづくりの現場や公教育において、3Dプリンターが積極的に導入されている。日本でも3Dプリンターは家電量販店で気軽に入手できる商品の一つになっている。日本の教育現場では、2020年度から小学校で必修化される予定のプログラミング教育の一環として、図工や美術、総合学習などで3Dプリンターを活用することを目ざしており、さまざまな分野で利用が広がりつつある。
3Dプリンターが立体造形物を出力する仕組みは、使える材料や造形物に応じ、おもに四つの方式がある。
(1)光造形方式はもっとも歴史が古く、高額な機種が多い。この方式は、紫外線が当たると硬化する液体樹脂で槽を満たしておき、その槽に向けて紫外線レーザーを放射し、照射を受けた樹脂部分を硬化させることで、立体的な造形物をつくり出す。
(2)粉末焼結積層方式は、(1)の液体樹脂にかわり、槽に粉末にした材料を詰めておき、高出力レーザー光によって焼結させ、槽内部で立体物を造形する方式。仕上がりが高精度で、高い強度が得られるのが特徴。
(3)熱溶解積層方式(FDM:Fused Deposition Modeling方式)は、ABS樹脂などを糸状の溶解液としてプリンターヘッドから押し出し、断面を編むように積層させ、固化させる方式。個人向け機器として多く利用されている方式で、立体精度や表面の状態は粗めに仕上がるが、機器の低価格化が図れる。
(4)インクジェット方式は、微細粒子にした材料をインクジェットのノズルから噴射し積層させながら、紫外線を当てて固化させ、これを何度も繰り返すことで立体造形物をつくる方式。従来の二次元プリンターの原理を応用した方式である。
このような3Dプリンターは、教育や医療、航空、宇宙関連分野をはじめ、ホビー、アートなどまで幅広く活用されている。たとえば、日常的なものであれば、アクセサリーや宝飾品、模型などで利用されており、工業製品では、これまで金型を必要としていた試作品段階で、金型をつくらずに試作ができるようになっている。また、医療分野での研究開発も活発であり、直接の転用が期待できる人工骨や義歯、インプラント、義肢装具などでの活用が先行しているほか、手術の練習や事前確認用として、臓器の模型を出力して使うケースなどもみられるようになった。
[編集部 2017年5月19日]
(金谷俊秀 ライター / 2012年)
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