ヨーロッパ合同原子核研究機構Centreeuropéen pour la recherche nucléaireの略称。物質を構成する基本粒子,すなわち素粒子とは何かを明らかにすることを目的として,ユネスコの勧告に基づいて,1954年スイスのジュネーブに設立された物理学研究所。この分野の実験的研究には巨大な粒子加速器が不可欠であるが,加速器の建設には莫大な費用がかかるので,アメリカとソ連以外の国は単独ではこの負担に耐えられない。そこで,西ヨーロッパ諸国は,フランス,西ドイツ,イギリスなどを中心に協力してCERNを設立したわけである。この意味でCERNはヨーロッパ共同体(EC)の科学上のシンボルとしての役割を担っているといえる。CERNでは,1959年に陽子を30GeVにまで加速できる陽子シンクロトロンが完成し,以来この加速器を用いた多くの実験が行われた。また82年には450GeVの陽子シンクロトロンも完成した。CERNにおける研究成果はアメリカやソ連(現,ロシア)のライバル研究所をしのぐと評価されているが,この陽子シンクロトロンが完成したことによって高エネルギー物理学のメッカとしてのCERNの地位はいっそう揺るぎないものになったといえる。
執筆者:成定 薫
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…科学の巨大化の傾向は,巨大な加速器を必要とする高エネルギー物理学などにもみることができる。大加速器の建設と維持には莫大な費用がかかるため,ヨーロッパ諸国は共同出資して,ジュネーブ近郊にCERN(セルン)(欧州合同原子核研究所)を設立した。ビッグ・サイエンスは,米ソを除いては,一国の手に余るものとなってしまったのである。…
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