I型アレルギー反応

  • I型アレルギー反応(アレルギー性疾患の総論)

内科学 第10版の解説

(2)Ⅰ型アレルギー反応
 Ⅰ型アレルギー反応は,次の事象によって引き起こされると考えられている.すなわち,①抗原の誘導によるIgE抗体の産生,②IgE抗体とマスト細胞および好塩基球細胞表面上の高親和性IgE-Fc受容体(FcεRI)との結合と,これに抗原の架橋が加わることによるヒスタミン,ロイコトリエン,血小板活性化因子(platelet activating factor:PAF),プロスタグランジンなどの各種ケミカルメディエーターの放出である.これらのケミカルメディエーターにより血管透過性亢進,平滑筋収縮が惹起され,疾患形成に関与する.喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,アナフィラキシーショックなどがこれに該当する. さらに近年,③これら各種ケミカルメディエーターが次なる炎症細胞群に作用して,I型アレルギー反応を炎症として修飾することが知られるようになった.加えて,④好酸球,マクロファージ,リンパ球がIgE,抗原の存在下に種々の生物学的活性物質を放出し,Ⅰ型アレルギー反応を修飾する. 以上を換言すれば,①,②はGell & Coombsの古典的なI型アレルギー反応であり,③,④は最近注目されているI型アレルギー反応の炎症としての側面を表しているといえる.実際に喘息やアレルギー性鼻炎では,炎症局所である痰や鼻汁中に,炎症細胞である好酸球の存在が証明されており,I型アレルギーの炎症性病態の側面を支持している.
a.Th1/Th2セオリーからみたアレルギー
 Ⅰ型アレルギーの主体であるIgE産生には,抗原提示細胞によるナイーブT細胞への抗原提示と,Th2細胞への分化,そしてIL-4をはじめとしたTh2サイトカイン産生によるB細胞刺激が重要である.ナイーブT細胞は,IFN-γ,IL-12刺激によってTh1細胞へ,IL-4刺激によってTh2細胞へと分化することが知られており,Th1細胞は,IL-2とIFN-γを分泌するが,IL-4やIL-5を分泌しない.一方,Th2細胞はアトピーの病態に重要なIL-4とIL-5を産生するがIL-2やIFN-γを産生しない. これらサイトカイン産生パターンはおもにマウスを用いて示されたものであり,ヒトのT細胞に関してもこれらの分類が適応できるかは,完全に解決されたわけではない.しかし,このTh1/Th2バランスの破綻がⅠ型アレルギーの病態形成に関与するというのは,非常に魅力的な理論であるといえる.たとえば,Ⅰ型アレルギーの重要な作用点であるIgE産生調節において,IL-4やIL-13といったTh2サイトカインはIgE産生を正の方向へ,一方でIFN-γは負の方向へ調節している.
 また,ヒトにおいてもアレルギー誘発試験24時間において,IL-4,IL-5,GM-CSFの産生細胞が増加しており,マウスのTh2細胞に相当する細胞が増加しているとの報告なども散見され,Th1/Th2理論の関与を支持している.しかしながら近年,Ⅰ型アレルギーの病態に関して単にTh2の優位性のみでは説明できない事象が多く報告され,またナイーブT細胞から分化するT細胞のサブセットも複数報告がなされるようになり,より複雑な因子の関与が想定されるようになってきた.
b.T細胞サブセットとⅠ型アレルギー
 近年,免疫・アレルギーの病態解析が進むとともに,ナイーブT細胞から分化するT細胞サブセットも複数知られるようになった.Th1,Th2細胞に加えて,制御性T細胞(Treg)とTh17細胞などの存在が報告され,これらはⅠ型アレルギーにも関与する重要なサブセットとして認識されるに至っている(図10-22-1).
 制御性T細胞は,ナイーブT細胞にTGF-β刺激が加わることによって,Foxp3が発現し,分化するT細胞サブセットであり,TGF-β,IL-10といった抑制性サイトカインを産生することで,Th2型の反応を抑制し,アレルギー病態抑制的に作用すると考えられている.そのほか,制御性T細胞がマスト細胞の脱顆粒を抑制することなども判明しており,生体内での制御性T細胞の免疫調節作用がⅠ型アレルギーの病態形成に関与していると考えられている. 実際に,重症アレルギー患者では,高IgE,高好酸球数を有するアレルギー体質をもつ健常人と比較したところ,Foxp3陽性制御性T細胞数が著しく低下することが報告されており,機能や数的異常がアレルギーの発症に関与することが想定されている.制御性T細胞については,病態へのかかわりとともに,アレルギー抑制的に作用する細胞であることから,制御性T細胞誘導による治療応用が期待され,現在も研究が進められている. 一方,Th17細胞は,ナイーブT細胞がTGF-β,およびIL-6刺激を受けた際に分化するT細胞サブセットで,IL-17などのサイトカインを産生する新たなT細胞サブセットとして報告された.分化にはSTAT3,RORγtの発現が必要である.IL-17は好中球の局所移行を誘導し,さまざまな免疫疾患の病態形成に関与している.Ⅰ型アレルギーのなかでは,重症喘息において,主要な炎症細胞である好酸球ではなく,好中球の集積を認める症例が存在していることが知られており,喘息重症化にかかわる細胞としても注目されている.
c.その他のサイトカインとⅠ型アレルギー
 I型アレルギーの病態形成として,おもに,Th2細胞から産生されるサイトカインを中心に概説したが,近年,リンパ球以外から産生されるサイトカインのⅠ型アレルギーへの関与についても知られるようになってきた.TSLPはおもに,上皮細胞から産生されるサイトカインであるが,樹状細胞の活性化を介してナイーブT細胞のTh2細胞分化を誘導するのに重要なサイトカインとして認識されている.また,同様におもに上皮細胞から産生されるIL-33は,気道局所において,Th2細胞を刺激し,IL-5やIL-13の産生を増加させることが示されている.また,IgEで感作されたマスト細胞はIL-33刺激によって脱顆粒が引き起こされるほか,好塩基球もIL-33刺激によってIL-13を産生すること,一方,線維芽細胞はeotaxinを産生することが知られている.このように,T細胞以外から産生されるサイトカインもⅠ型アレルギーの病態に関与しており,Ⅰ型アレルギーは,リンパ球,マスト細胞,好酸球などの炎症細胞のほか,上皮細胞などの細胞群および,種々のサイトカインが複雑にネットワークを形成することで引き起こされていると考えられている.[茆原順一]
■文献
茆原順一:好酸球が語るアレルギーの臨床と分子病態.アレルギー,59: 943-949, 2010.
伊藤 亘,茆原順一:アレルギー疾患の診断の進め方.医学と薬学,55: 15-21, 2006.
Palomares O, Yaman G, et al: Role of Treg in immune regulation of allergic diseases. Eur J Immunol, 40: 1232-1240, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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