CMソング(読み)シーエムソング

改訂新版 世界大百科事典 「CMソング」の意味・わかりやすい解説

CMソング (シーエムソング)

ラジオやテレビのCMcommercial message)のために作られた歌。俗にコマーシャルソングともいわれる。会社名,商品名,広告文などを音楽にのせて伝わりやすくし,興味をひき記憶に残すなどの広告効果を目的とする。企業や商品の歌は,20世紀初めアメリカの〈コカ・コーラ〉,明治時代の〈オイチニの薬屋〉など古くから存在するが,商業放送に登場したのは1922年,アメリカでラジオ放送が開始された直後である。初期のCMソングで有名なものには,〈chew Chiclets and cheer up〉と歌うチクレットガムがあった。日本でも51年,民間ラジオ放送開始と同時に登場した。第1号は三木鶏郎(とりろう)作詞作曲の〈僕はアマチュアカメラマン〉(小西六写真工業)で,会社名も商品名も入らない歌だったが,番組の前後に放送され,番組提供社名を印象づけた。53年民間テレビ放送開始後は,〈ワワワ,ワが三つ〉(ミツワ石鹼),〈明るいナショナル〉(松下電器)など商標名を入れたCMソングが親しまれ,55年には1節に13回も商品名を織り込んだ〈ポポンとね〉(塩野義製薬)が商品名訴求に効果をあげた。こういったCMソングの変化の背景には,経済発展と受信機台数の増加に伴う広告主のCMへの期待増,そして人々のCM受容度の変化がある。このころまで,テレビCMはCMソングにあわせて画面を作ることが多かったが,制作技術が進み,CFの利用などにより画面展開やタレント,会話が主役になるにつれてCMソングは背景または装飾としての役割が大きくなる。カラーCMが本格化する66年以降,大衆の音楽感覚向上に伴い,CMソングは商品名の強調よりも音楽として優れたものを作ろうとする傾向が生まれるとともに,フォークソング,ロック,ウェスタン,ニューミュージックとスタイルも多様化しはじめ,マンダムの〈男の世界〉,資生堂の〈君の瞳は10000ボルト〉,国鉄の〈いい日旅立ち〉などが生まれた。またCMのために作られながら商品名も企業名もなく,多くはCM企画と同時にレコード会社とタイアップしてレコード化され,広告効果とレコード販売の共同キャンペーンが計画されるようになった。従来のCMソングの枠を超えたこれらの歌は流行歌として自立し,〈イメージソング〉という言葉も作られるようになった。

 CMソングは放送広告の情緒面で重要な役割を果たし,企業や商品イメージを増幅して,PRの効果をもつが,同時に音楽文化への影響も大きい。たとえば,初期のCMソングはほとんどが長調で作られたが,これは短調主体の当時の流行歌と対照的であり,明るいホームソングの分野を開いた。またつねに新鮮さを求めるCMの世界は,吉田拓郎や坂本竜一など新しい作曲家,シンガーソングライターをマスコミに登場させ続けている。
流行歌
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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