DLVOの理論(読み)ディーエルブイオーノリロン

化学辞典 第2版 「DLVOの理論」の解説

DLVOの理論
ディーエルブイオーノリロン
theory of DLVO

電解質溶液固体,あるいは不溶性液体との界面には,拡散電気二重層ができて,界面付近のイオンや電位分布が,界面電気現象や疎水コロイドの安定度に重要な関係があることが知られている.B.V. Derjaguin(Deryagin)とL. Landau(1941年)およびE.J.W. VerweyとJ.Th.G. Overbeek(1948年)らは,それぞれ独立に,二つの界面が近づくときの電気二重層間の相互作用や電位の分布に対するイオンの濃度,ならびにイオン価の影響を考察して,疎水コロイドの安定度に関する理論を提出した.これを理論提出者の名前の頭文字をとって,DLVOの理論という.電解質水溶液中で正または負に帯電している界面に対して,反対電荷のイオン(対イオン)がこれと中和するように分布し,その濃度,したがって電位φは界面からの距離に関して指数関数的に漸減し,

φ = φδeκd
で示される.ここに,φδ は界面に固定されるイオン層(Stern層)の電位で,κは定数である.κはφが φδ の1/eになるときの厚さの逆数に相当するから,1/κは電気二重層の厚さを表す基準となる値で,

で与えられる.ここで,zはイオン価,e電気素量nはイオン濃度(イオン数 cm-3),εは溶液の誘電率kボルツマン定数Tは絶対温度である.この関係から,二重層の厚さがイオン濃度とイオン価の影響を受けて縮小され,界面間に作用するファンデルワールス力による引力と,電位による斥力とが釣り合って,斥力が消えるときに界面の結合,すなわちコロイド粒子凝集が起こるものと考えると,シュルツ-ハーディの(イオン価の)法則が説明される.ただし,この理論は粒子の大きさにはあまり関係がなく,水銀滴の合一の場合にも適用される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 「DLVOの理論」の解説

DLVOの理論【DLVO theory】

二つの界面が近づくときの,電気二重層間の相互作用に基づいた疎水コロイド溶液の安定性に関する理論.これはデリャーギンとランダウ(1941)とフェルヴァイとオーヴァベック(1948)がそれぞれ独立に導いたので四人の名前で呼ばれている.電解質水溶液中で,正または負に帯電している界面に対して,反対符号のイオンはこれと中和するように分布すると考えると,その濃度に基づく電位 φ は界面からの距離 d に関して指数関数的に減少する.すなわち

φ=φ0 exp(-κd

となる.φ0 は界面に固定されるイオン層の電位で,κ は定数であるが電気二重層の厚さを表現する基準となる値で

である.ここで,z はイオン価,e は電気素量,n はイオンの濃度(イオンの数/cm3),ε は溶液の誘電率,kボルツマン定数*T は絶対温度である.

共存イオンの影響で,電気二重層の厚さが変化すると考えると,この式からシュルツェ‐ハーディの法則*もたくみに説明可能である.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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