化学辞典 第2版 「ICP質量分析」の解説
ICP質量分析
アイシーピーシツリョウブンセキ
ICP mass spectrometry
略称ICP-MS.ICP(高周波誘導結合プラズマ,inductively coupled plasma)をイオン源とした代表的な無機元素分析のための質量分析.水溶液中の金属イオンを高温のプラズマでイオン化して質量分析計で測定することは,1975年,A.L. Grayによって報告され,ICPをイオン源とする質量分析法は,1980年,R.S. Houkらによって報告された.プラズマのイオン化領域の温度が,6000~9000 K と高いので,ほとんどの元素をイオン化することができ,ICP質量分析計は高感度(10-12~10-9 g mL-1),多元素同時分析法として使用されている.質量分析部に四重極型(四重極質量分析計)または二重収束型(二重収束質量分析計)の分析装置を用いる.四重極型のものは同位体の分析を行うには分解能が低いが,操作性,迅速性にすぐれている.装置は図に示すように,ICP部,イオンレンズ,静電アナライザーおよび検出部からなっている.イオン化部はネブライザーで試料を霧化し,脱溶媒化したエーロゾルを,40.68 MHz または27.12 MHz で発生させたArプラズマでイオン化する.イオンレンズは,イオンビームを質量分析計に合わせた形状にするために使用される.共存イオンによるマトリックスの効果,プラズマ中で生成する多原子イオンによる効果を受けやすい.溶液または固体で酸に溶解できるものであれば分析が可能である.環境分野における工場排水などの分析,半導体関連の極微量分析,新材料開発から品質管理までの不純物分析,地球化学における同位体分析などに使用される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報