U-2型機事件(読み)ユーにがたきじけん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「U-2型機事件」の意味・わかりやすい解説

U-2型機事件
ユーにがたきじけん
U-2 Affair

1960年5月1日にソ連領空を侵犯したアメリカのスパイ目的のU-2型機が撃墜され,飛行士が捕えられた事件。それまでソ連は弾道ミサイルの分野でアメリカに先んじ,大陸間弾道ミサイル ICBM配備も進んでいるとみられていたが,アメリカはU-2型機の偵察などによりソ連の実戦配備 ICBMの数が意外に少いことを突止めた。またそれがあばかれたことを,この事件によってソ連も知り,ソ連の核軍備増強への一つの拍車となった。ソ連は同事件後,同年5月 16日にアメリカの D.アイゼンハワー大統領のソ連への招待を延期すると声明,また同日から開催予定の東西首脳会議は流会になった。さらに,ソ連は 61年9月にアメリカ,ソ連,イギリス三大国の自発的核実験停止の「紳士協定」を破って実験を再開し,62年秋には核ミサイルキューバに持込んだ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「U-2型機事件」の意味・わかりやすい解説

U2型機事件
ゆーにがたきじけん

1960年5月1日、アメリカの高性能偵察機U2型機が情報収集のため高高度でソ連領空に侵入し、ソ連によって撃墜された事件。操縦士パワーズは逮捕され、飛行目的がスパイ行為であったことを自白した。ソ連の発表に対しアメリカもこの事実を認め、過去4年にわたって同種の飛行が行われてきたことを明らかにした。事件は、5月16日から5年ぶりに開催されることになっていたアメリカ、イギリス、ソ連、フランスの東西首脳会談の直前に起きたため、ソ連首相フルシチョフはアメリカに対しスパイ飛行の中止約束、陳謝、責任者の処罰を求め、それなくしては本会談を開始できないと主張した。そのため結局首脳会談は開会に至らず、東西の緊張関係はいっそう深刻化した。

[石本泰雄]

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