偵察機(読み)テイサツキ(その他表記)reconnaissance aircraft

デジタル大辞泉 「偵察機」の意味・読み・例文・類語

ていさつ‐き【偵察機】

写真電子機器などを用いて敵情偵察任務とする軍用機

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精選版 日本国語大辞典 「偵察機」の意味・読み・例文・類語

ていさつ‐き【偵察機】

  1. 〘 名詞 〙 写真撮影などによって敵の様子を偵察することを任務とする軍用機。
    1. [初出の実例]「アッ、飛行機だ━偵察機(テイサツキ)かな━イヤそうぢゃない爆撃機だ」(出典:まんだん読本(1932)日本のエヂソン〈井口静波〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「偵察機」の意味・わかりやすい解説

偵察機 (ていさつき)
reconnaissance aircraft

上空からの写真偵察やレーダーによる電子情報の収集を主目的とする軍用機で,一般に敵の対空火器を避けるために高空の高速性能と低空の運動性能に優れる。第1次大戦以来,軍用機はまず地上部隊を支援する偵察を目的として発達した。初期の偵察機はおもに肉眼前線の状況や,射撃の弾着の観測を行うものであったが,現在の偵察機は写真・電子偵察を主任務として武装されている。

 第2次大戦後,偵察機の存在を世に知らしめたのは,1960年5月1日にソ連領内で偵察飛行中のアメリカ空軍のロッキードU2が撃墜されて操縦士が捕虜となった〈U2型機事件〉であった。U2はアメリカ空軍とCIAが,1957年のソ連のICBM発射成功を背景に戦略偵察用に採用した機体で,55機が製造された。本機の後継のロッキードSR71は64年に初飛行,高度2万4000m,速度マッハ3以上の高性能を示し,約30機が運用されている。

 偵察機は他機種からの派生が多く,アメリカの輸送機派生型では,軽輸送機を改造した電子偵察機ビーチRU21,長距離輸送機を改造したボーイングRC135がある。戦闘機を改造してその高速・高運動性能を生かしたものが最も多く,原型機の航続力とスペースを活用したマクダネルRF101,低空運動性能を生かしたボートRF8,さらに高速性能と運動性能に優れ両機の後継となったマクダネルRF4がアメリカの代表例である。RF4は航空自衛隊でも導入しており,F4戦闘機の高性能を生かし,光学カメラ,監視レーダー,赤外線探知装置等を装備して全天候下での偵察が可能である。ソ連では,ヤコブレフYAK27戦闘機の派生型で機首に透明の風防を持つYAK28D戦術用偵察機と考えられ,1967年初公開されたミコヤンMiG25は,戦闘行動半径の大きさとマッハ3以上の高速性能を生かし,中近東では偵察機としても運用されている。

 1959年にアメリカ初の偵察衛星が打ち上げられたが,偵察衛星は,操縦士が危険を冒す必要のない点,また年単位の継続偵察によって時間変化の情報が得られる点で偵察機より優れている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「偵察機」の意味・わかりやすい解説

偵察機
ていさつき
reconnaissance aircraft

肉眼あるいは光学器機,電波,電子装置,写真,テレビジョンなどによって敵情を上空から偵察するためにつくられた軍用機。情報収集機とも呼ばれる。人工偵察衛星が発達しても,写真などの解像力に限度があり,また特定目標の精密偵察が必要になることもあるため,偵察機の利用は当分続くものと思われる。用途によって多くの種類があるが,航続距離が長く,高速であることが要求される。種類としては,アメリカ合衆国のロッキードU-2のように戦略情報をとる遠距離用の大型戦略情報機,さらにアメリカのロッキード SR-71ブラックバードのように最大速度マッハ 3.3,航続時間マッハ3で1時間 30分,作戦高度2万 4000mという高性能偵察機も出現した。ほかにかぎられた地域や戦場を偵察する近距離用の戦術偵察機,写真偵察機,電子偵察機,海洋哨戒偵察機などがある。

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百科事典マイペディア 「偵察機」の意味・わかりやすい解説

偵察機【ていさつき】

敵情の探察を任務とする軍用機。戦略偵察機,戦術偵察機の別があり,初め乗員の目視によったが,今日ではすべて高性能のカメラを装備し,写真を記録・分析する。敵のECM(敵の電磁波兵器を妨害する手段としての〈電子対策〉)やレーダーなどのデータを収集して対抗策を講ずるための電子偵察機もある。また敵の制圧地域上空での偵察行動の困難から,無線操縦または記憶装置による自動操縦で行動する無人偵察機も出現している。1960年代以後は偵察衛星が多用されている。→無人機
→関連項目軍用機

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「偵察機」の意味・わかりやすい解説

偵察機
ていさつき
reconnaissance aircraft

敵の状況を探るための軍用機。空からの敵情偵察はフランス革命戦争中の1794年に気球が使われたのが最初で、第一次世界大戦が始まると、誕生まもなかった飛行機が偵察用として大きな価値を認められ、そこから軍用機の歴史が始まった。偵察機を大別すると、地上部隊に密接に結び付き、周辺の監視や砲兵の弾着観測にあたる観測機(現在ではおもにヘリコプター)、戦域一帯を偵察する戦術偵察機、敵地の奥深くまで飛ぶ戦略偵察機の三つになり、無人機も一部では使われている。偵察の手段としてはカメラが長らく主体になっていたが、現在ではレーダーや赤外線装置なども用い、夜間や悪天候時の偵察能力が強化されている。また相手の発する電波を捕捉(ほそく)して、レーダーなど電子機器の能力を探り、通信の分析により動きを推測する電子偵察も重視され、平時においても電子情報収集機が活動を行っている。

[藤田勝啓]

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