上空からの写真偵察やレーダーによる電子情報の収集を主目的とする軍用機で,一般に敵の対空火器を避けるために高空の高速性能と低空の運動性能に優れる。第1次大戦以来,軍用機はまず地上部隊を支援する偵察を目的として発達した。初期の偵察機はおもに肉眼で前線の状況や,射撃の弾着の観測を行うものであったが,現在の偵察機は写真・電子偵察を主任務として武装されている。
第2次大戦後,偵察機の存在を世に知らしめたのは,1960年5月1日にソ連領内で偵察飛行中のアメリカ空軍のロッキードU2が撃墜されて操縦士が捕虜となった〈U2型機事件〉であった。U2はアメリカ空軍とCIAが,1957年のソ連のICBM発射成功を背景に戦略偵察用に採用した機体で,55機が製造された。本機の後継のロッキードSR71は64年に初飛行,高度2万4000m,速度マッハ3以上の高性能を示し,約30機が運用されている。
偵察機は他機種からの派生が多く,アメリカの輸送機派生型では,軽輸送機を改造した電子偵察機ビーチRU21,長距離輸送機を改造したボーイングRC135がある。戦闘機を改造してその高速・高運動性能を生かしたものが最も多く,原型機の航続力とスペースを活用したマクダネルRF101,低空運動性能を生かしたボートRF8,さらに高速性能と運動性能に優れ両機の後継となったマクダネルRF4がアメリカの代表例である。RF4は航空自衛隊でも導入しており,F4戦闘機の高性能を生かし,光学カメラ,監視レーダー,赤外線探知装置等を装備して全天候下での偵察が可能である。ソ連では,ヤコブレフYAK27戦闘機の派生型で機首に透明の風防を持つYAK28D戦術用偵察機と考えられ,1967年初公開されたミコヤンMiG25は,戦闘行動半径の大きさとマッハ3以上の高速性能を生かし,中近東では偵察機としても運用されている。
1959年にアメリカ初の偵察衛星が打ち上げられたが,偵察衛星は,操縦士が危険を冒す必要のない点,また年単位の継続偵察によって時間変化の情報が得られる点で偵察機より優れている。
執筆者:別府 信宏
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敵の状況を探るための軍用機。空からの敵情偵察はフランス革命戦争中の1794年に気球が使われたのが最初で、第一次世界大戦が始まると、誕生まもなかった飛行機が偵察用として大きな価値を認められ、そこから軍用機の歴史が始まった。偵察機を大別すると、地上部隊に密接に結び付き、周辺の監視や砲兵の弾着観測にあたる観測機(現在ではおもにヘリコプター)、戦域一帯を偵察する戦術偵察機、敵地の奥深くまで飛ぶ戦略偵察機の三つになり、無人機も一部では使われている。偵察の手段としてはカメラが長らく主体になっていたが、現在ではレーダーや赤外線装置なども用い、夜間や悪天候時の偵察能力が強化されている。また相手の発する電波を捕捉(ほそく)して、レーダーなど電子機器の能力を探り、通信の分析により動きを推測する電子偵察も重視され、平時においても電子情報収集機が活動を行っている。
[藤田勝啓]
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