日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウスバサイシン」の意味・わかりやすい解説
ウスバサイシン
うすばさいしん / 薄葉細辛
[学] Asarum sieboldii Miq.
ウマノスズクサ科(APG分類:ウマノスズクサ科)の多年草。サイシンともいう。根茎は地に伏し、低く立ち上がった茎の先端に長い柄をもった2枚の葉を対生状につける。葉は卵形で、先はとがり、基部は心臓形となる。冬は葉が枯れる。3~5月に、2枚の葉の間に柄のある扁球(へんきゅう)形の花をつける。萼筒(がくとう)の内部には12本の雄しべと6本の雌しべがみられる。本州および九州北部の山地の樹陰に生える。近縁のオクエゾサイシンA. heterotropoides Fr.Schm.は、葉は大きくて先が鈍く、本州北部から北海道に分布する。また、四国、九州には、雄しべ6本、雌しべ3本をもつクロフネサイシンA. dimidiatum F.Maek.が分布する。
[菅原 敬 2018年7月20日]
薬用
漢方では地下部を細辛(さいしん)と称して鎮痛、鎮咳(ちんがい)、去痰(きょたん)、利尿剤として用いる。民間では葉をかんで口臭を除くのに用いる。根をかむと辛いのは、メチルオイゲノール、シネオールなどの精油と他の辛味成分を含有するからである。中国では中国東北部や朝鮮に分布するケイリンサイシンA. mandshuricum (Maxim.) M.Y.Kim et S.K.So(A. heterotropoides Fr.Schm. var. mandshuricum Kitagawa)を用い、ヨーロッパではオウシュウサイシンA. europaeum L.を用いる。
[長沢元夫 2018年7月20日]