だれる(読み)ダレル(英語表記)Lawrence George Durrell

デジタル大辞泉 「だれる」の意味・読み・例文・類語

だ・れる

[動ラ下一]
気持ちなどがゆるんで、しまりがなくなる。緊張感がなくなる。だらける。「生活態度が―・れる」「試合が途中で―・れる」
あきて退屈する。「観客が―・れる」
相場に活気がなくなり、やや安くなる。
[類語]たるむ緩む緩めるだらけるたゆむたがが緩む

ダレル(Lawrence George Durrell)

[1912~1990]英国の小説家・詩人。「ジュスティーヌ」「バルタザール」「マウントオリーブ」「クレア」の4部からなる「アレクサンドリア四重奏」で知られる。

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精選版 日本国語大辞典 「だれる」の意味・読み・例文・類語

だ・れる

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
  2. 物事の状態や調子にしまりがなくなる。また、気持がゆるむ。物事に対して緊張を欠く。だらける。
    1. [初出の実例]「太鼓が倦怠(ダレ)れば『太鼓が疎かぢゃ踊もおろかだ』と口々に促(いなが)し」(出典:土(1910)〈長塚節〉一三)
  3. 興味がうすらいで退屈する。飽きを催す。特に芝居や寄席などで、客が倦怠を感じる。
    1. [初出の実例]「だれる。あまり長口上か又は趣向理屈過てさみしくなり、見物あきはつるをいふ」(出典:茶番狂言早合点(1821‐24)初)
  4. はりあいがなくなる。手持ちぶさたになる。
    1. [初出の実例]「ヤイこっちへ入れや、俺がだれらあなあ」(出典:新内・与話情浮名横櫛(源氏店)(1868‐70頃か))
  5. 生気、鮮度などが低下する。
    1. [初出の実例]「サカナガ dareta(ダレタ)」(出典:改正増補和英語林集成(1886))
  6. 相場の伸びがにぶり下落ぎみになる。また、市場に活気がなくなる。
    1. [初出の実例]「大南米やの舛て弐はいだれ」(出典:雑俳・川柳評万句合‐明和五(1768)松五)
  7. 女に夢中になる。ほれる。
    1. [初出の実例]「深川の女郎にだれやアがったな」(出典:落語・辰巳の辻占(1896)〈四代目橘家円喬〉)

ダレル

  1. ( Lawrence Durrell ローレンス━ ) イギリスの詩人、小説家。主著の四部作「アレクサンドリア四重奏」は、現実の一元的把握の不可能性という考え方に基づいた構成法で現代小説に新たな局面を開いた。ほかに「黒い本」など。(一九一二‐九〇

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「だれる」の意味・わかりやすい解説

ダレル
だれる
Lawrence George Durrell
(1912―1990)

イギリスの小説家、詩人。2月27日、インドに生まれ11歳で帰国。大学受験に失敗して、ナイトクラブピアニスト、カーレーサー、不動産業者などを転々とした。1935年、母や弟妹らとともにギリシアコルフ島に移住、牧歌的な生活を営みながら本格的な創作に手を染めた。ヘンリー・ミラーの影響を受けて書いた小説『黒い本』(パリ、1938)は、不毛な都会に住む若者らの奔放な生態を描いて一部の注目をひき、『ひとりの国』(1943)ほかの詩集では、東地中海の風物を題材に選び、特異な詩の世界を確立した。第二次世界大戦中から戦後にかけてイギリス外務省情報局に勤務、カイロ、アレクサンドリア、ロードス島ベオグラードコルドバなどに駐在、一時キプロス島の学校教師を勤めたが、南フランスに引退してふたたび創作に専念し、小説『アレクサンドリア四重奏』(1957~60)で一挙に文名を高めた。その後に発表した二部作『アフロディテの反乱』(1968~70)は、アテネイスタンブール、ロンドンを舞台に、秘密結社めいた国際企業組織の経営者兄弟とその妹、彼女と結婚して組織に引き込まれる発明家、酒浸りの建築家、娼婦(しょうふ)あがりの映画女優、彼女に生き写しの人造人間などが絡み合う愛欲小説で、寓意(ぐうい)的な色彩が濃い。ほかに、五部作『ムッシュー』(1974)、『リビア』(1978)、『コンスタンス』(1982)、『セバスチャン』(1983)、『クウィンクス』(1985)、小説『チェファルー』(1947、改題『暗い迷路』1961)、現代詩論、土地案内記、劇、外交官生活を描いた滑稽(こっけい)短編集、少年冒険小説などがある。特異な風土と題材、大仕掛けな筋立て、華麗な文体などを特徴とするため、しばしばゴシック小説家とよばれた。

[高松雄一]

『河野一郎訳『黒い本』(中公文庫)』『高松雄一訳『アレキサンドリア四重奏』(1960~63・河出書房新社)』『富士川義之訳『アフロディテの反乱』(第一部『トゥンク』1973、第二部『ヌンクァム』1976・筑摩書房)』『丹羽正著『魂と舞踊、ロレンス・ダレル頌しょう』(1977・コーベブックス)』

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改訂新版 世界大百科事典 「だれる」の意味・わかりやすい解説

ダレル
Lawrence Durrell
生没年:1912-90

イギリスの詩人,小説家。インドに生まれ,イギリスのカンタベリーのセント・エドマンド・スクールを卒業。ジャズ・ピアニスト,カーレーサー,不動産業者,エジプトやギリシアにおける政府情報担当官などを経て,キプロス島における公務を最後に,1957年以後,創作に専念,南フランスに定住している。処女詩集(1931)から《自分だけの国》(1943)を経て《織女星その他の詩》(1973)にいたる詩集や,《サッフォー》(1950)などの戯曲もあるが,世界的な名声を得たのは,〈現代における愛の探求〉を主題とした《アレクサンドリア四重奏》と総称される四部作小説,《ジュスティーヌ》(1957),《バルタザール》《マウントオリーブ》(ともに1958),《クレア》(1960)によってである。はじめの3作では同一事件を異なる角度から物語り,第4作でその後の展開をたどるという構成のこの大作を,作者は〈相対性原理にもとづく四重層小説〉とも呼んでいる。詩的な散文によって喚起された〈土地の精霊〉が濃密な異国的風景を形づくり,その中で文学的実験の方法意識と物語性への固執とが絡みあっているのが特質といえよう。《アフロディテの反逆》と総称される二部作小説,《トゥンク》(1968)と《ヌンクアム》(1970)は同じ特質の新たな展開を意図した作品である。ほかに小説《黒い本》(1938),《苦いレモン》(1959)など地中海地方の数冊の紀行文,現代詩論(1952),ヘンリー・ミラーとの往復書簡(1963)などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「だれる」の意味・わかりやすい解説

ダレル
Durrell, Lawrence

[生]1912.2.27. ダージリン
[没]1990.11.7. ソミエール
イギリスの小説家,詩人。フルネーム Lawrence George Durrell。インドで生まれ,11歳でイギリスに戻り,のちパリ,ギリシアのケルキラ島に住む。第2次世界大戦中は外務省広報官としてアテネとカイロに勤務,その後もアレクサンドリア,ロードス島,ベオグラード,コルドバ (アルゼンチン) に勤務,キプロス島を経て南フランスに住むという徹底したコスモポリタンの生活を送った。自伝的な『黒い本』 The Black Book (1938) にはヘンリー・ミラーの影響がみられ,ミラーは生涯の友となった。「アレキサンドリア・カルテット」と呼ばれる4編の小説,『ジュスティーヌ』 Justine (1957) ,『バルタザール』 Balthazar (1958) ,『マウントオリーブ』 Mountolive (1958) ,『クレア』 Clea (1960) は日記,回想,手紙,空想などを織り交ぜて,小説とはなにかという問題を追究する実験的作品で,ダレル自身は相対性原理に基づく小説と呼んでいる。ほかに,詩集『一人だけの国』A Private Country (1943) ,『都市,平野,人々』 Cities,Plains and People (1946) ,『怠惰の木』 The Tree of Idleness (1953) ,『イコン』 The Ikons (1966) ,詩劇『サッフォー』 Sappho (1959) ,詩論『現代詩への鍵』 Key to Modern Poetry (1952) ,『プロスペローの庵』 Prospero's Cell (1945) に始まるギリシア紀行など。

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百科事典マイペディア 「だれる」の意味・わかりやすい解説

ダレル

英国の詩人,小説家。詩集もあるが,アレクサンドリアを舞台に複雑な現代的恋愛を追求した四部作《ジュスティーヌ》《バルタザール》《マウントオリーブ》《クレア》(1957年―1960年)によって名声を得た。ほかに小説《黒い本》(1938年),詩劇《サッフォー》(1950年)。

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