改訂新版 世界大百科事典 「クレア」の意味・わかりやすい解説
クレア
John Clare
生没年:1793-1864
イギリスの農民詩人。イングランド中部ノーサンプトンシャーの生れ。父は農場労働者で教区の金銭的援助を受けていた。生活は不如意で,7歳のとき以来,家畜番,庭師,民兵など,仕事を転々としたが,病弱ながら感受性の鋭いクレアは,独力で早熟な才能を開発した。1817年に処女詩集を自費出版。これがキーツの出版者ジョン・テーラーの目にとまり,《田舎の生活風景を叙する詩》(1820)を出版。以後,《村の吟遊詩人その他の作品》(1821),《羊飼いの暦》(1827),《田舎詩人》(1835)と続く。ロンドン訪問中には,ハズリット,コールリジ,ド・クインシーの知己を得ている。1823年狂気の徴候が現れ,一時小康を得るが,41年末,ノーサンプトンの精神病院に監禁され,23年にわたる残余の生涯をそこで閉じる。田舎の風物を微細に描いたクレアの筆致は繊細であり,非実在の幻影の女性〈メアリー・ジョイス〉を歌い,自らの狂気を洞察した詩は痛切極まりない。
執筆者:山内 久明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報