ブレンナー（読み）ぶれんなー（その他表記）Sydney Brenner

日本大百科全書(ニッポニカ)

ブレンナー
ぶれんなー
Sydney Brenner
（1927―2019）

イギリスの分子生物学者。南アフリカ共和国のウィットウォータースランド大学を卒業後、1954年オックスフォード大学にて博士号を取得した。しばらく南アフリカに戻った後、1956年イギリスのケンブリッジにある医学研究会議（MRC：Medical Research Council）に移り、F・ジャコブやメセルソンMatthew Meselson（1930―　）らとともにメッセンジャーRNA（mRNA）の発見に貢献し、さらにF・クリックらとともに遺伝子暗号が三つの塩基からなる組（コドン）により記述されていることを発見した。その後、実験の方向を大きく転換し、新しい実験動物として線虫C. エレガンス（C. elegans）をみいだし、遺伝学的解析の基盤を確立した。線虫はヒトゲノム解析のプロトタイプとして、すなわち多細胞生物の先駆けとして全ゲノム解析が行われた。また、線虫は体が透明であり、顕微鏡により生きたまま全細胞を観察できるため、細胞分裂、細胞分化やプログラム細胞死（アポトーシス）の分子機構の解明のために用いられたものである。「器官の発達の遺伝的制御とプログラムされた細胞死に関する発見」の業績により、J・サルストン、R・ホルビッツとともに2002年のノーベル医学生理学賞を受賞した。

［馬場錬成］

[参照項目] | アポトーシス | クリック | コドン | 細胞 | サルストン | ジャコブ | ホルビッツ | メッセンジャーRNA

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ブレンナー
Brenner，Sydney

[生]1927.1.13. 南アフリカ，ジャーミストン
[没]2019.4.5. シンガポール
南アフリカ生まれの生物学者。2002年「器官の発生とプログラムされた細胞死（アポトーシス）の発見」に対し，H.ロバート・ホルビッツ，ジョン・サルストンとともにノーベル生理学・医学賞を受賞した。南アフリカのウィットウォーターズランド大学で学士，修士号取得後，1954年イギリスのオックスフォード大学で博士号を取得した。1979～86年ケンブリッジの医学研究会議 MRC分子生物学研究所，1986～91年同分子遺伝学ユニットを指揮したのち，1996年アメリカ合衆国カリフォルニア州ラホヤの分子科学研究所を設立。2000年から同じくラホヤのソーク研究所にも勤務。初めはリボ核酸 RNAなどの分子生物学に従事していたが，1960年代初め，研究対象を 1個の受精卵から成体まで細胞が分化して育つ発生過程と神経系の仕組みに定めた。1963年，約 1000個の細胞からなる線虫 C.エレガンス Caenorhabditiselegansをモデル動物として提唱した。この 1mm程度の虫は短時間で増殖し，細胞を顕微で簡単に見られる。ブレンナーは化学物質を使って，線虫の遺伝子に突然変異を起こし，その影響が細胞にも現れることを示し分子生物学の研究に使えることを示した。研究は後続のホルビッツやサルストンに引き継がれ，プログラムされた細胞死の研究などにつながった。ラスカー賞，京都賞など受賞多数。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

改訂新版　世界大百科事典

ブレンナー
Otto Brenner
生没年：1907-72

西ドイツの労働運動指導者。ハノーファーの労働組合活動家の息子として生まれ，鋲打工助手を経て電気機械組立工となる。13歳で社会主義労働者少年団（SAJ）に入り，1924年以来ドイツ金属労働者組合に所属し，SAJの幹部として活躍するが，29年海軍戦艦建造計画に社会民主党（SPD）が反対しなかったことを不満とし，社会主義労働者党Sozialistische Arbeiterpartei（SAP）の結成に参加した。ナチス政権下では反逆行為準備のかどで2年間投獄される。第2次大戦後直ちに社会民主党と金属産業別組合に復帰，州議会議員を経て金属産業別組合の議長に選出され，この労組を世界最大の労働組合にまで発展させた。61年以来，国際金属労連（IMF）の会長を務め国際的にも活躍した。
執筆者：徳永 重良

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

百科事典マイペディア

ブレンナー[峠]【ブレンナー】

アルプス東部，オーストリアとイタリアの国境にあり，イン川，アディジェ川の谷を結ぶ。標高1370m。古くから南北交通の要路で，1867年には鉄道開通。第２次大戦中，ヒトラーとムッソリーニの会談が３回行われた。
→関連項目チロル

出典　株式会社平凡社

367日誕生日大事典

ブレンナー

生年月日:1907年11月8日
西ドイツの労働運動家
1972年没

出典　日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」