だいち

精選版 日本国語大辞典 「だいち」の意味・読み・例文・類語

だいち

〘副〙 (「だいいち(第一)」の変化した語) 第一番に。まず。
※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉一三「本当に是ぢゃ不便ね、だいち点けっ放しで寐る時なんか明る過ぎて」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「だいち」の意味・わかりやすい解説

だいち

宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))が2006年(平成18年)1月にH-ⅡAロケットにより打ち上げた陸域観測技術衛星ALOS(エイロス)(Advanced Land Observing Satellite)ともよばれる。地図作成、地域観測、災害状況把握、資源調査などを目的とする。

 「だいち」は高度約690キロメートルの太陽同期準回帰軌道軌道傾斜角約98度)を、約99分かけて地球を周回する。衛星の大きさは6.2メートル×3.5メートル×4.0メートル、打上げ時の質量は約4000キログラムで世界最大規模である。太陽電池パドルを展開すると横幅は22.2メートルになる。観測機器としては以下の三つのセンサーを搭載している。

(1)パンクロマチック立体視センサー(PRISM)は、衛星直下と前方後方の3方向を独立した3台のCCDカメラで同時に観測でき、立体的な地形データを作成する。観測幅は約35キロメートル(広域モードで70キロメートル)で、2.5メートルの地上分解能を有する。

(2)高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)は、可視光(3波長)と近赤外線の計4波長で土地被覆状態や農地森林などを観測する。衛星直下で幅70キロメートルを10メートルの地上分解能で観測する性能を有する。

(3)フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダー(PALSAR)は、Lバンド(周波数1270メガヘルツ)の電波を使った合成開口レーダーで、昼夜・天候にかかわらず観測することができる。高分解能モード(地上分解能7~44メートル、観測幅40~70キロメートル)、広観測域モード(地上分解能100メートル、観測幅250~350キロメートル)、多偏波観測モード(垂直偏波水平偏波の四つの組合せ。地上分解能24~89メートル、観測幅20~65キロメートル)がある。

 「だいち」は、2万5000分の1の地図の尺度に相当する画像情報が取得できるので、新たにつくられた道路、橋、住宅などの最新情報を反映した地形図の修正ができる。広域を高分解能で観測できる特徴をいかして、新潟県中越沖地震や東日本大震災などの被災状況の観測で活躍した。

 「だいち」は、2006年の打上げから2011年まで6年間にわたる観測を行い、ミッションを終了した。これまで合計で650万シーンの画像を取得して公開している。2015年には、蓄積されたデータを活用して、世界最高水準の全世界標高データ(高さ精度30メートル)を無償で公開している。なお、「だいち」の後継機である「だいち2号」は、合成開口レーダーPALSARの改良型(PALSAR-2)を搭載して、2014年5月にH-ⅡAロケットにより打ち上げられた。

[森山 隆 2017年3月21日]


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知恵蔵 「だいち」の解説

だいち

2006年1月に鹿児島県種子島宇宙センターからH‐IIAロケットで打ち上げた日本の陸域観測技術衛星。地球観測衛星の1つ。重さ約4tで軌道高度は約700km。可視光・近赤外領域を感知する光学センサーとマイクロ波の反射を利用して地形などをとらえる合成開口レーダーを備えている。光学センサーは地上で2.5mの物体を見分ける高い分解能を持つ(米国のランドサットの分解能は30m、フランスのスポットは10m)。合成開口レーダーの分解能はやや落ちるが、マイクロ波は雲などに影響を受けず、昼夜を問わず、あらゆる天候での観測が可能になり、2万5000分の1の等高線付きの世界地図を容易に作ることができる。打ち上げ後起きたアジア各地の地震、津波、火山噴火などの映像を素早くとらえ、国際災害チャーター事務局や現地に詳しく情報を送っている。

(的川泰宣 宇宙航空研究開発機構宇宙教育センター長 / 2007年)

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