ノガリヤス(英語表記)Calamagrostis srundinacea(L.) Roth(=Deyeuxia arundinacea (L.) P.Beauv.)

改訂新版 世界大百科事典 「ノガリヤス」の意味・わかりやすい解説

ノガリヤス
Calamagrostis srundinacea(L.) Roth(=Deyeuxia arundinacea (L.) P.Beauv.)

山地丘陵地林間草地原野に普通に見られるイネ科多年草。短い根茎をもち,まばらに叢生(そうせい)した株をつくる。茎は直立して硬く,高さは50~150cmに達し,6~7節があり,枝分れしない。葉はおおむね茎の節につき,細長い線形で,長さは30~50cm,幅4~8mmで,やや硬く,下半部でねじれて裏が上に出たいわゆる裏葉(うらは)となり,ややざらつく。円錐花序は秋に茎頂にあらわれ,全体長楕円形で,直立し,長さは15~40cm,短い枝を多数斜上し,小穂を多数密生する。小穂は長さ3~6mm,紫色を帯びた白っぽい淡緑色で,2枚の穎(えい)と1個の小花があり,小花は穎とほとんど同長で,花穎は先端より少し下から芒(のぎ)を出し,基盤に毛叢がある。和名の〈野刈安〉は,野に生えるカリヤスの意味である。北海道から九州にみられ,ユーラシア大陸に広く分布する。

 ノガリヤス属Calamagrostisは日本に種類が多く,本種のほかにもホッスガヤ,ヤマアワ,イワノガリヤス,ヒメノガリヤスなどを含め15種ほどが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノガリヤス」の意味・わかりやすい解説

ノガリヤス
のがりやす / 野刈安
[学] Calamagrostis arundinacea (L.) Roth var. brachytricha (Steud.) Hack.

イネ科の多年草。稈(かん)は堅く、高さ0.6~1.5メートル。葉鞘(ようしょう)に毛がある。8~10月、稈頂に分枝が輪生状につく円錐(えんすい)花序をつける。小穂は長さ4~5ミリメートル、小花が1個ある。芒(のぎ)は膝(ひざ)折れし、護穎(ごえい)の基部近くから出て小穂外に突出する。基盤の毛束は短い。丘陵地や山地の草原に生え、北海道から九州に分布する。基本種はユーラシア大陸に広く分布する。名は、カリヤスに似ており、野原に普通にみられることによる。また、比叡山(ひえいざん)の西塔(さいとう)に多くみられるのでサイトウガヤともいう。

[許 建 昌]


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百科事典マイペディア 「ノガリヤス」の意味・わかりやすい解説

ノガリヤス

サイトウガヤとも。イネ科の多年草。北海道南西部〜九州の野原や丘陵地の林などにはえる。高さ50〜160cm。初秋開花する。花穂は円錐状で直立し,1小花からなる小穂を多数つける。名はカリヤスに似ているが,利用されないことによる。近縁のヒメノガリヤスは山地にはえ,高さ30〜60cm。夏に開花。花穂は小型で卵形。ふつう葉鞘(ようしょう)の上端に短毛がある。

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