ベトナム独立運動(読み)ベトナムどくりつうんどう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベトナム独立運動」の意味・わかりやすい解説

ベトナム独立運動
ベトナムどくりつうんどう

19世紀なかばに始ったフランスの植民地支配に反対し,ベトナム独立を目指した運動。これらの運動を推進した人たちのなかには,封建社会の進歩分子をよりどころとするもの (たとえば,ファン・ディンフン) ,日本援助によろうとするもの (ファン・ボイ・チャウ) ,フランスの施政に期待するもの (ファン・チュウ・チン) ,農民ゲリラによるもの (ホアン・ホア・タム) らがあった。次にはロシア十月革命,中国革命などの影響を受けた知識階層出身者による反仏独立運動が起った。 1926年ハノイで結成されたベトナム国民党のグエン・タイ・ホックが指導した 30年2月9~10日のイエンバイ反乱は有名。国民党がフランスの弾圧で壊滅したのち,ベトナム独立運動の指導権を握ったのは共産党で,グエン・アイ・クォク (のちのホー・チ・ミン) は 30年にインドシナの3つの共産主義者グループを統合してインドシナ共産党を創立すると同時に,すべての愛国者を結集するインドシナ反帝戦線を創設した。これは第2次世界大戦直前の時期のインドシナ民主戦線を経て戦時下の抗日戦線ベトミンに続き,45年9月,その指導者ホー・チ・ミンは日本の降伏を機にベトナム民主共和国成立を宣言したが,フランスの認めるところとならず,46年インドシナ戦争が勃発した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ベトナム独立運動」の解説

ベトナム独立運動(ベトナムどくりつうんどう)

19世紀の後半以降のベトナムの独立を求める運動には,四つの段階があった。(1)フランスによる支配が開始された当初の19世紀後半に展開された,阮(グエン)朝という独立王朝の擁護をめざした運動である。(2)20世紀初頭,ファン・ボイ・チャウなど,伝統的な儒教知識人で西洋近代思想の影響を受けた人々が,ドンズー運動など新しい原理による独立運動を展開した。(3)両大戦の戦間期で,西洋式の教育を受けた知識人の間に,ベトナム国民党やインドシナ共産党など,さまざまな潮流の政治運動が形成された。(4)第二次世界大戦期にベトナム独立同盟が登場し,1945年のベトナム民主共和国の独立をもたらした。しかしベトナムがその独立と統一を実現するには,75年のベトナム戦争終結を待たなければならなかった。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報