改訂新版 世界大百科事典 の解説
ロイヤル・ダッチ・シェル・グループ
Royal Dutch/Shell Group
エクソンに次ぐ世界第2位の規模をもつ石油会社。シェルと略称。エクソンと同じように原油採掘から精製,販売まで垂直に統合されたグループで,ほかに天然ガス,化学,原子力事業も行っている。共産圏を除く世界100ヵ国以上に進出している典型的な多国籍企業である。
シェルはオランダのロイヤル・ダッチ・ペトロリアム社Royal Dutch Petroleum Co.(N.V.Koninklijke Nederlandsche Petroleum Maatschappij)とイギリスのシェル・トランスポート・アンド・トレーディング社Shell Transport & Trading Co.という二つの親会社(持株会社)から成る。両社がShell Petroleum Co.Ltd.U.K.およびShell Petroleum N.V.Netherlandという二つの投資会社の株式を6対4の比率で保有し,この二つの投資会社が世界100ヵ国以上の500社にも達する現地操業会社やサービス会社などに出資するという形をとっている。
シェル・トランスポート・アンド・トレーディング社は,1833年にマーカス・サミュエルがロンドンに開いた古美術品・装飾品を扱う小さな店に始まる。この店は当時人気のあった東洋産の貝殻の輸入で大きな利益をあげたが,これがシェルのマークに貝殻が使われている理由である。その後1878年までに息子のマーカス・サミュエルがロンドンにマーカス・サミュエル商会を設立し,同商会は97年にシェル・トランスポート・アンド・トレーディング社と改名された。一方,ロイヤル・ダッチ・ペトロリアム社は1890年にオランダ領東インドの油田開発のためベルヒVan den Bergらによって設立された。1903年両社およびロスチャイルド家はアジア地域における石油販売会社アジアティック・ペトロリアム社を設立した。この背景にはスタンダード石油会社を含む3社のアジアにおける石油販売競争があった。07年シェル・トランスポート・アンド・トレーディング社とロイヤル・ダッチ・ペトロリアム社の資産を合同し,ここにロイヤル・ダッチ・シェル・グループが誕生した。その際オランダに採掘,精製を主とするバタビア・ペトロリアム社De Bataafsch Petroleum Maatschappijとイギリスでの輸送,販売を主とするアングロ・サクソン・ペトロリアムAnglo-Saxon Petroleum Co.が設立された。
シェルはH.W.A.デターディング(1896年以来ロイヤル・ダッチ・ペトロリアム社の経営陣の一人)の経営のもとで,東南アジア,メキシコ,ルーマニア,ロシアなどで利権を握り,石油開発を行った。第2次大戦後はベネズエラ,中東を中心に産油量が増加し,アメリカ,北海にも油田を保有している。在日法人としてシェル石油があったが,同社はシェル・グループの昭和石油と1985年1月に合併して昭和シェル石油となった。ロイヤル・ダッチ・ペトロリアム社の売上高2652億ドル(2004年12月期)。
執筆者:田中 隆之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報