地域熱供給(読み)ちいきねつきょうきゅう

百科事典マイペディア 「地域熱供給」の意味・わかりやすい解説

地域熱供給【ちいきねつきょうきゅう】

地域を一つの単位として,そこにあるビル,個人住宅,諸施設へ冷暖房用の熱供給を集中して行うこと。プラントをその地域内または近隣に設置することによって,熱エネルギーの生産と消費を地域で完結させるのが特徴。生産される熱量は小規模だが,地熱や中小水力のようにその地域に存在するエネルギーの開発利用の点から有用性が高く,導入に積極的な自治体が増えている。また,熱源として都市ガス,石油石炭のほかにゴミ焼却場,工場,ビル,変電所地下鉄,地下送電線などからの排熱余熱を活用するため,未利用エネルギーの有効利用というメリットもあわせ持つ。 政府では特に新エネルギーを利用した地域エネルギー供給システムの導入を促進しており,大規模コジェネレーション地域熱供給を行う〈みなとみらい21〉(神奈川県横浜市)などを対象に環境調和型エネルギーコミュニティ事業を展開している。1972年制定の熱供給事業法によって,5000kcal/h以上の設備を持つ地域熱供給システムは公益事業として認められ,1997年3月末までに認可事業は79社,133地点となった。
→関連項目ヒートポンプ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地域熱供給」の意味・わかりやすい解説

地域熱供給
ちいきねつきょうきゅう

DHC。地域のオフィスビルや住宅に,熱供給プラントからパイプを通して蒸気温水冷水を送り,冷暖房に使うシステム。熱源は都市ガス,石油,LPガス,石炭,電気に加え,最近ではゴミ焼却工場,変電所,地下鉄などの都市排熱のほか,河川水と気温の温度差などを利用したエネルギーも使用されている。欧米では 100年以上の歴史があるが,日本では 1970年に大阪万博で初めて登場した。熱供給事業法により,規模が 5Gcal/h以上の場合に料金認可などの規制を受ける。パイプ敷設のコスト高などが普及を妨げており,認可事業は全国で約 100地点にとどまっている。

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知恵蔵 「地域熱供給」の解説

地域熱供給

地域の住宅やビルに蒸気、温水、冷水などを集中的に供給するシステム。1972年制定の熱供給事業法によって21GJ(ギガジュール)時以上の規模を持つシステムを公益事業と規定。2006年3月現在、認可事業は89社・154地区ある。熱源に、都市ガス、石油、LNG、石炭のほか、ヒートポンプ、ごみ焼却、変電所や地下送電線の廃熱利用も登場。北欧などでは、地球温暖化防止の最も重要な施策として、コジェネレーションの廃熱を利用できる地域熱供給が拡大しているが、住宅用は減少傾向にある。

(飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長 / 2007年)

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