パイプ(英語表記)pipe

翻訳|pipe

精選版 日本国語大辞典 「パイプ」の意味・読み・例文・類語

パイプ

〘名〙 (pipe)
① 液体、気体、また電線などを通すための管。金属、木、合成樹脂などで作られる。〔工学字彙(1886)〕
② (①から転じて) 二者相互の意思疎通を助ける人や機構をいう。
※日々の収拾(1970)〈坂上弘〉「世間ではその怒りも一つのパイプにはなり得るのに」
③ 笛。呼子。
※おとづれ(1897)〈国木田独歩〉下「車長のパイプすでに響きし後なることは」
④ 洋式喫煙具の一種。
(イ) 刻みタバコのための喫煙具。タバコを詰めるものと、それに接続する軸および吸口からなる。
風俗画報‐七一号(1894)大婚御祝典奉祝献品者「『パイプ』一箇」
(ロ) 紙巻きタバコに用いる吸口。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉一〇「左手の掌底に二寸程の『パイプ』(西洋の巻煙草の煙管)を蔵して」

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デジタル大辞泉 「パイプ」の意味・読み・例文・類語

パイプ(pipe)

液体・気体などを通すための管。
1から転じて》二者の間をとりもつ人や組織。「交渉のパイプ役」
西洋風の喫煙具。キセル状の刻みタバコ用と、巻きタバコの吸い口用とがある。
管楽器。また、その管。
コンピューターのあるプログラムコマンドが出力する結果を、別のプログラムやコマンドに受け渡す機能。IPCプロセス間通信)の一。
[類語]くだかんチューブホース

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改訂新版 世界大百科事典 「パイプ」の意味・わかりやすい解説

パイプ
pipe

きせると同様,刻みタバコを吸うための喫煙具。タバコをつめる火皿と煙がとおる中空の柄および吸口をもつ。木,石,骨,陶器,金属などさまざまな素材でつくられ,時代や地域,民族によってもそれぞれ特色がある。

アメリカ大陸で栽培が始まったタバコは,薬用をはじめさまざまな用途をもっていたが,なかでも喫煙の風習はのちに全世界に広まった。西洋世界と接触するまで,喫煙の風習は新大陸の広い範囲に及んでいたが,喫煙文化をより発展させていたのはメソアメリカの原住民社会であった。そこでの喫煙法は,葉巻,アシやメキシコ竹の吸口をつけた葉巻,そしてパイプによる喫煙があり,前2者がより古い形態で,パイプは10~11世紀ころから普及していく。そのためメソアメリカにはパイプ文化圏,葉巻文化圏,そして両者が共存する地域が存在した。メキシコ中央部はパイプと吸口付き葉巻が共存する地域で,そこから南へ向かうにしたがって葉巻文化が主流となり,パイプの出土例は少なくなる。パイプ文化はメソアメリカの北の部分に太平洋岸からメキシコ湾岸まで帯状に広がっている。そのなかでもメキシコ西部地方はパイプの出土数も多く,その種類も豊富である。形状はL字,逆T字状のグループと筒状のものに大別できるが,後者はまれである。材質は土で,素焼きのものと赤色や黒色のスリップを施したものがあり,一般に焼きが固い。そして厚手のものは柄が短く,薄手のものは柄が長い。また,動物や人物を形象したものも多い。なお,メキシコ西部地方ではパイプは支配階級の象徴として用いられた。

 北アメリカにおいては,7世紀ころから筒状土製パイプの使用が見られ,メソアメリカのパイプの源流とも考えられる。やがて石製パイプが主流とな之,筒状パイプのほかに,精巧な彫刻を施したL字,逆T字状のパイプもつくられるようになる。南アメリカのパイプに似た土製パイプが広く分布しているが,正確な考古学上のデータに乏しい。
執筆者:

はやくから粘土を素材としたクレー・パイプclay pipeが使われていた。このクレー・パイプは,ブライアー・パイプbrier pipeが登場する19世紀まで,ヨーロッパの代表的な喫煙具であった。もともとは新大陸の現住民の間で用いられていたパイプをまねてつくったといわれているが,16世紀の終りごろイギリスで製造が始まり,喫煙の流行とともにオランダなど各国で盛んにつくられるようになった。初期のものは小型であったが,18世紀に入ると柄の長いものが多くなり,着彩したり,柄をらっぱ状に巻いたり,趣向をこらしたものがつくられるようになった。しかし,どんな形にでもでき,安価であるという利点の反面,こわれやすいという欠点があった。このため紙巻タバコ,ブライアー・パイプが主流の今日では,ごく一部の地域で観光みやげ用などに製造されているにすぎない。クレー・パイプのほか,ヨーロッパを代表する喫煙具としては,18世紀初頭に発見された海泡石(かいほうせき)(メアシャウムMeerschaum)を素材とするメアシャウム・パイプMeerschaum pipe(メション・パイプ)が挙げられる。海泡石は白色,軽量,柔軟な鉱物で,世界に広く産出し,日本でもいくつか産地があるが,パイプの素材として用いられている原石は,トルコを中心とする一部の地域に産出するものに限られている。素材が柔らかいので彫刻など細工がしやすく,意匠的に優れたものは美術的評価も高い。また長年使いこむうちに表面の色が白色から美しいあめ色に変わり,愛好家はこの色づけのぐあいによって,パイプの価値判断の一つとしている。メアシャウム・パイプは,ブライアー・パイプが一般的になる20世紀初頭まで,およそ200年間にわたっておもに上流階級の人々の間で愛用され,〈パイプの女王〉ともいわれる。しかし,メアシャウムも加工しやすいがこわれやすく,高価であるため,クレーと同様にブライアー・パイプの登場とともに衰退した。今日最も普及しているブライアー・パイプの素材であるブライアーbrierは,おもに地中海沿岸地方に自生する,ホワイトヒースと呼ばれるツツジ科の灌木の根で,19世紀の中ごろにパイプとしての利用法が発見された。クレーやメアシャウムに比べて丈夫で,こわれにくいという,パイプの素材としては理想的ともいえる特性があり,また加工したときの木目の素朴な美しさなどが,パイプの王座を占めた大きな要因といえよう。

 以上のように,ヨーロッパではクレー・パイプからメアシャウム・パイプ,そしてブライアー・パイプへと移り変わったが,このほかにも中央ヨーロッパの山岳地帯で利用・発達したチロリアン・パイプやジャーマン・パイプ,素材別では南アフリカ産のヒョウタンの一種を利用したキャラバッシュ・パイプ,ブライアー以外の木製のパイプ,金属製のパイプなどもある。イギリスのダンヒルDunhill,ローウィLoewe,キャラタンCaratan,BBBなどがパイプ・メーカーとして世界的に有名。

 ヨーロッパ以外の地域で特徴のあるパイプには,中近東,インド北部,中国からアジアの一部にかけて広く見られる水パイプ(水煙具)がある。国によって,ナルギーラ,フッカなどと呼ばれ,素材や形状も異なるが,その原理はみな同じで,タバコの煙を水にくぐらせることによって煙を冷やし,味をやわらげるくふうに基づいている。また,中国,朝鮮,日本など東アジアの国々には,雁首(がんくび)と吸口に金属(吸口に玉(ぎよく)を用いたものもある)を用い,その二つを竹などでつないだきせるがあり,アメリカにはトウモロコシの穂軸を素材としたコーン・パイプがあるなど,世界各地には独特な喫煙具が見られる。
執筆者:


パイプ
pipe

(くだ)

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百科事典マイペディア 「パイプ」の意味・わかりやすい解説

パイプ

喫煙具の一つ。火皿bowlと吸管stemからなり,西洋風の刻みタバコ(パイプタバコ)をつめて吸う。材料としてはクレー(粘土の素焼),海泡石(かいほうせき),ブライアー(南欧産のエリカ・アルボレアの根)等がおもに使われるが,他にもトウモロコシの軸を使ったコーンパイプなど各種のものがある。

パイプ

(くだ)

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「パイプ」の解説

パイプ

MS-DOSやUNIXで、複数のデータを自動的に流れ作業で処理する方法のこと。異なる動作を行うコマンド間を記号「|」で区切って記述する。たとえば、MS-DOSで「TYPE a.TXT | MORE」と入力すると、画面に表示すべきa.TXTの内容がMOREコマンドの入力データになり、1画面ずつ表示される。「|」の左側のコマンドによる処理結果が、右側のコマンドの入力データになる。

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岩石学辞典 「パイプ」の解説

パイプ

(1) 管のような形の鉱体.この語は垂直または高く傾いた伸びた富鉱体(ore shoot)に限定されることがあり,水平的な鉱体はマント(manto)と呼ばれる[Bateman : 1952, Park & MacDiarmid : 1964].(2) 岩筒または鉱筒のことで,玄武岩やキンバリー岩の角礫岩が埋める円柱状の火口をいう.

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世界大百科事典(旧版)内のパイプの言及

【管】より

…中空の物体で,長短の差はあるが,比較的その径に比して長さの長いものを総称していう。管(かん),チューブtube,パイプpipeなどともいう。材質は生体から金属まで多岐にわたっており,ゴムや布などでつくられた柔軟なものはホースhoseと呼ばれる。…

【管】より

…中空の物体で,長短の差はあるが,比較的その径に比して長さの長いものを総称していう。管(かん),チューブtube,パイプpipeなどともいう。材質は生体から金属まで多岐にわたっており,ゴムや布などでつくられた柔軟なものはホースhoseと呼ばれる。…

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