夢見小僧(読み)ゆめみこぞう

改訂新版 世界大百科事典 「夢見小僧」の意味・わかりやすい解説

夢見小僧 (ゆめみこぞう)

運命と致富を語る昔話小僧が良い夢を見る。親や主人からその内容を聞かれるが,どうしても語らない。そのために迫害されるが,後に夢に見たとおりの幸福な結婚をする,という話。類型の話はヨーロッパ,トルコ朝鮮等に分布する。良い夢をみだりに口外するなという戒めは古くからある。《宇治拾遺物語》には,吉備真備に夢を盗まれて出世を逃がした男の話がある。俗信にもユズリハや宝舟の絵を枕の下に入れると良い初夢を見る,また逆に悪夢を見たときには,〈夕べの夢は貘(ばく)にあげます〉といって天井に向かって息を3度吐くとよいという。人々はかつて夢に未来の予知を託し,これの扱いには慎重を期してきた。また,同時にこの話は,小僧に課せられた婚姻試験とみることもできる。すなわち,迫害されて後,漂泊に耐えうる体力,厄難を恐れぬ勇気,胆力,さらに鬼の呪宝を詐取する知力による配偶者の獲得ということである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「夢見小僧」の解説

夢見小僧 ゆめみこぞう

昔話の主人公
初夢をみた子どもが「よい夢は人にかたるな」という戒めをまもったため家を追われるが,ついに2軒の長者の婿となり,両家に金の橋をかけて半月ずつかよった。鬼が島,竜宮などに流され,生き棒,聴き耳などの宝物をもらうなど,各種の類話が青森県から沖縄県まで分布している。

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