改訂新版 世界大百科事典 「新居格」の意味・わかりやすい解説
新居格 (にいいたる)
生没年:1888-1951(明治21-昭和26)
評論家。徳島県に生まれる。キリスト教社会事業家として知られる賀川豊彦は従弟にあたる。中学生時代から社会主義に親しみ,東京帝国大学卒業後,《読売新聞》《大阪毎日新聞》《東洋経済新報》《東京朝日新聞》などで記者生活を送った。1923年から本格的な文筆生活に入り,社会評論,文芸評論などで活躍,つねにジャーナリズムの先頭をゆく〈尖端人〉と評された。昭和初期の世相をとらえた〈モボ(モダンボーイ)〉〈モガ(モダンガール)〉や〈左傾〉は彼の造語である。24年,安部磯雄らと日本フェビアン協会の結成に参加,翌25年には日本プロレタリア文芸連盟にも加わったが,思想的にはアナーキズムの立場をとり,プロレタリア文学と政党の関係についてマルクス主義を奉ずる蔵原惟人と激しく論争,また25年に宮島資夫らと《文芸批評》を創刊,32年には《自由を我等に》の創刊にかかわった。初期の生活協同組合運動の実践的な指導者としても知られ,また第2次大戦後は東京都杉並区長,および日本ユネスコ協会理事に選ばれた。著書に《左傾思潮》(1921),《アナキズム芸術論》(1930)など。
執筆者:佐々木 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報