禅宗様建築(読み)ぜんしゅうようけんちく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「禅宗様建築」の意味・わかりやすい解説

禅宗様建築
ぜんしゅうようけんちく

鎌倉時代に禅宗が布教されるに伴い、禅宗建築に用いられた建築様式。これは当時中国で行われていた宋(そう)の建築様式を模したもので、禅宗の発展とともに広く普及し、第二次世界大戦前まで唐様(からよう)とよばれていた。禅宗様建築においては、礎盤(そばん)の上に立つ柱の頂部が細められ(これを粽(ちまき)という)、柱上に台輪をのせ、詰組(つめぐみ)の組物(くみもの)(斗栱(ときょう))を置く。和様建築の場合の組物は柱上だけにあって、中間は間斗束(けんとづか)あるいは蟇股(かえるまた)が入るが、禅宗様建築では中間にも組物が置かれる。組物の肘木(ひじき)には円弧曲線が用いられ、上は左右に広がって組物の中に拳鼻(こぶしばな)が出る。内部は床(ゆか)を張らずに土間とし、構架は虹梁(こうりょう)・大瓶束(たいへいづか)とし、虹梁には眉欠(まゆかき)・袖切(そできり)・錫杖(しゃくじょう)彫りなどの装飾を施す。壁は竪板(たていた)張りで、扉は桟唐戸(さんからと)とし藁座(わらざ)で吊(つ)る。窓は花頭(かとう)窓、欄間は弓欄間(波欄間)で、天井は中央を鏡天井とする。屋根の軒は垂木(たるき)を放射状に配した扇垂木で、軒反りも強い。この様式はのちに和様・大仏様と一体化し、折衷様として発展した。

[工藤圭章]


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「禅宗様建築」の解説

禅宗様建築
ぜんしゅうようけんちく

唐様(からよう)建築とも。鎌倉前期,禅宗と同時に中国から導入された建築技術をもとにして国内で造りあげられた新しい建築様式。中国の本格的な建築様式が導入されたのは1253年(建長5)に創建された鎌倉建長寺が初めと思われる。以後京・鎌倉の禅宗五山に続々と中国風の大建築が建設された。禅宗様建築の遺構は鎌倉末期以後の中規模のものしか現存せず,初期の建築様式の詳細は不明。技術的に洗練されたのは南北朝末~室町初期で,鎌倉の円覚寺舎利殿はこの頃のもの。堂内を土間とすること,裳階(もこし)を用いること,貫(ぬき)の使用,天秤(てんびん)形式の組物,海老虹梁(えびこうりょう)など細部に特有の彫刻をほどこすなどが特徴。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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