老人性紫斑病

内科学 第10版 「老人性紫斑病」の解説

老人性紫斑病(単純性紫斑病・老人性紫斑病)

(2)老人性紫斑病
概念
 老人の萎縮した皮膚に認められる紫斑で,血管,結合組織の異常が原因である.年齢とともに血管周囲にある結合組織(コラーゲンエラスチン)や脂肪組織が減少し,血管の進展度が低下する結果,軽度の刺激で皮下出血を起こす.
病態
 血管壁の変成による伸展度の減少により,血管が傷つきやすく出血を起こす.
臨床症状
 手背,前腕外側など外力を受けやすい部位に,比較的大きい(1~数cm)紫斑がみられる.境界鮮明,形は不規則であり,暗紫紅色を呈する.
検査成績
 止血機能に異常を認めない.すなわちスクリーニング検査(血小板数,APTT, PT)は正常である.Rumpel-Leede試験が陽性となることがある.
診断
 皮疹の状況,発症状況などを考慮して診断する.止血学的検査で異常がないことが重要である.造血器疾患,血小板減少性紫斑病,栄養障害などを除外する.
経過・予後
 出血斑は大きいことが多いが機能的な障害は少ない.皮膚の萎縮が原因であり再発は多い.
治療
 有効な治療はない.物理的刺激をさけ,皮膚を保護する.[村田 満]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

家庭医学館 「老人性紫斑病」の解説

ろうじんせいしはんびょう【老人性紫斑病】

[どんな病気か]
 老人の腕の前部手の甲(こう)、脚(あし)の前部、足の甲、顔面、くびなど、日光の当たる部分に、点状やまだら模様の紫斑ができ、数日後、紫斑のあとに色素の沈着(しみ)が残るものです。
 年をとると、血管周囲にある結合組織(コラーゲン)や脂肪組織が萎縮(いしゅく)して薄くなるために、血管の保護がされにくくなります。
 そのうえ、血管自体も老化によってもろくなるために、ちょっとした力が加わっても皮下出血(ひかしゅっけつ)をおこし、紫斑ができるのです。
 老化にともなう避けがたい変化が原因であり、心配する必要も、治療の必要もありません。
 ただ、しみが残りますから、老化によって皮下出血がおこりやすくなっていることを自覚し、机やいすなどに手足をぶつけたり、強いゴムひもの入った衣服でからだを締(し)めつけたりしないように気をつけます。

出典 小学館家庭医学館について 情報