デジタル大辞泉
「薫物」の意味・読み・例文・類語
たき‐もの【▽薫物/×炷物】
種々の香を調合して作った練り香。また、それをたくこと。
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たき‐もの【薫物】
〘名〙
① 沈
(じん)・
白檀(びゃくだん)・丁字
(ちょうじ)など種々の香
(こう)を
粉末にして練りあわせて作った練香
(ねりこう)。合香
(あわせごう)。合薫物
(あわせたきもの)。
※大和(947‐957頃)一三五「たきもののくゆる心はありしかどひとりはたえてねられざりけり」
② (━する) 着物などにたきしめるために香をたきくゆらすこと。また、着物にたきしめた香。
※枕(10C終)二三一「よくたきしめたるたきものの〈略〉煙の残りたるは」
※
旧約全書(1888)以賽亜書「むなしき祭物をふたたび携ふることなかれ燻物
(タキモノ)はわがにくむところ」
[語誌]基本的な
製法は、粉末にした数種の香を調合したものに、蜜、梅肉、
甘葛などを加え、
鉄臼(かなうす)で搗いた後、丸く整えて壺に入れ、数日間土中に埋めておくというもの。こうした製法は
大陸から伝わったと考えられるが、次第に和風の調合法が発達していった。同じ香銘でも、人や家によって
香料の
比率や練り方などが異なり、秘法として伝承された。製法に関する
書物に「薫集類抄」「むくさのたね」等がある。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
薫物
たきもの
香をたいてその香烟を衣服,頭髪,部屋などにしみこませること,および種々の香料を合わせてつくった練香そのものをいう。香は初め寺院の仏前を清めるための「供香」として行なわれてきたが,奈良時代末期から平安時代にかけて上流社会で部屋の異臭を消すために実用化され,「空薫物 (そらだきもの) 」として流行をみた。部屋に香の匂いを香らせることを「空薫」といい,衣服に直接香をしみこませるのを「移香 (うつりが) 」というが,その香りのもとには,香木 (沈香,丁子,白檀など) を粉末にし,麝香 (じゃこう) などを加えて梅肉や蜂蜜で練り固めたものが用いられた。なお,この香への関心は,やがて「薫物合 (たきものあわせ) 」 (→香合 ) にも発展し,また,それに伴い次々に新しい匂いをつくりだす試みもなされ,梅花,荷葉,侍従,菊花,落葉,黒方などといった薫物銘もできてきた。こうした香遊びのなかから,のちに「組香 (くみこう) 」が行なわれるようになり,ここに香道の基礎がつくられた。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報