香合(読み)コウゴウ

デジタル大辞泉 「香合」の意味・読み・例文・類語

こう‐ごう〔カウガフ〕【香合/香×盒】

香を入れる小さな容器。漆器・木地・蒔絵まきえ陶磁器などがある。香箱。

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精選版 日本国語大辞典 「香合」の意味・読み・例文・類語

こう‐ごうカウガフ【香合・香盒】

  1. 〘 名詞 〙
  2. こうあわせ(香合)
    1. [初出の実例]「来る廿五日は京都に於て香合(カウガフ)の御会、其砌には無くて叶はぬ香炉」(出典:歌舞伎・傾城筑紫𤩍(1814)一)
  3. 香を入れる蓋(ふた)付きの小容器。漆器・陶器・堆朱(ついしゅ)製などがある。原則として漆器には沈香・伽羅・白檀などの木質の香、陶器には練香を入れる。こうばこ。
    1. [初出の実例]「常徳院献物。練貫三重。盆。香合」(出典:蔭凉軒日録‐永享八年(1436)一一月一八日)
    2. 「けふの法会に宝前へ供へおいたる胡蝶の香合(カウガフ)」(出典:歌舞伎・青砥稿花紅彩画白浪五人男)(1862)序幕)
    3. [その他の文献]〔宗史‐礼志一四・嘉礼二〕

こう‐あわせカウあはせ【香合】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 合物(あわせもの)一種左右にわかれ、沈香木をその名を隠してたき、香の種類をかぎわけたり、優劣の判定をしたりする遊戯。名香合
    1. [初出の実例]「香合といふこと。いにしへよりつたへて、代々のきみもすてたまはず」(出典:五月雨日記(1479))
  3. 種々の香料各人の秘法で調合し、練香にしたものをたいて優劣を判定する遊戯。薫物合(たきものあわせ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「香合」の意味・わかりやすい解説

香合(こうごう)
こうごう

香を入れる蓋(ふた)付きの器。茶器のなかではもっとも小器ながら、きわめて多くの愛玩(あいがん)的資質を備え、古来茶人たちに珍重されてきた。普通は炭手前(すみでまえ)の際、客の鑑賞に供されるのであるが、炭手前が略される茶会の場合などは、香合だけを待合(まちあい)や席中に飾ることもある。換言すれば、あらかじめ香合を飾っておくことによって炭手前を省略することがある。その場合、香合は古袱紗(こぶくさ)や紙釜敷(かみかましき)などにのせて飾ることが習いとされている。香合は炉用、風炉(ふろ)用のほか、炉・風炉兼用があり、材質も陶磁器をはじめ漆器、木地(きじ)、貝、金属、竹のほかに、自然の果実を加工したものなど実に多岐にわたる。またその産地から大きく和物と唐物(からもの)に分けられる。そして用法上、炉用は練香(ねりこう)を用いるため陶磁器が、風炉用は香木を用いるため木地、漆器が、また炉・風炉兼用は貝、金属、象牙(ぞうげ)などがそれぞれ使われる。炉用の香合は、和物、唐物いずれも数量膨大であり、その形だけをみても幾百種にも上るため、これを整理選択した『形物(かたもの)香合一覧』が、1855年(安政2)に刊行された。いわゆる形物香合番付であるが、わけても賞賛された形物香合に交趾(こうち)、染付(そめつけ)、青磁などがあり、和物にも楽焼(らくやき)、仁清(にんせい)、志野(しの)、織部(おりべ)、伊賀、信楽(しがらき)などの優れたものがある。風炉用は唐物に堆朱(ついしゅ)、堆黒(ついこく)、存星(ぞんせい)、倶利(ぐり)、螺鈿(らでん)などが、また和物には蒔絵(まきえ)、鎌倉彫、一閑張(いっかんばり)などが好まれた。そして兼用香合としては、貝合(かいあわせ)などの蛤(はまぐり)や檜扇貝(ひおうぎがい)が、金属では砂張(さはり)や毛織(モール)、七宝(しっぽう)が好んで使われた。

[筒井紘一]



香合(こうあわせ)
こうあわせ

2種の香を比べ、その匂(にお)いのよさを競う遊び。香は本来仏供養に用いられるものであったが、平安時代には、その匂いを楽しむ風が貴族社会に広まり、数種の香料を調合した薫物(たきもの)を合わせて優劣を競う薫物合(あわせ)が物合の一つとして行われるようになった。薫物は一種の練香(ねりこう)で、梅花荷葉(かよう)などの名がつけられており、平安時代の貴紳らが処方の伝授者に擬せられているが、人ごとに調合法には多少の差がある。他の物合同様に判者が置かれ、単なる匂いの優劣のみならず、その銘の文学的興趣も判定の対象となった。室町時代に至り、薫物のかわりに沈香(じんこう)などの香木が用いられるようになったが、これを名香合と称する。

[杉本一樹]

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百科事典マイペディア 「香合」の意味・わかりやすい解説

香合【こうごう】

を入れておく蓋(ふた)付きの器。漆器,陶磁器,金属,貝等で作り,茶人の間で愛用された。特に中国製の交趾(こうち)焼や呉須(ごす),青磁等の型物香合や,日本製では志野焼織部陶乾山などのものが珍重された。→香道
→関連項目合子

香合【こうあわせ】

をたいて,においの深浅,優劣を評し,勝負を定める遊戯。平安時代から行われ,薫物合(たきものあわせ)ともいわれた。→香道

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改訂新版 世界大百科事典 「香合」の意味・わかりやすい解説

香合 (こうごう)

香を入れる蓋付きの器。献香,聞香,茶の湯の三つの場合に分けられるが,本来香炉に添っていたものである。香合のもっとも早い例は正倉院に伝来する塔鋺といわれ,その後中国製の堆朱,存星など漆物を中心に大小の合子(ごうす)が使われている。日本の漆物としては鎌倉彫や蒔絵がある。茶の湯の香合の場合は,大別すると漆物と陶磁器で,ほかに木地物,金属,貝などが用いられ,献香用,聞香用に比べると種類が多く,造形的にも変化にとんでいる。漆物には中国製と日本製があり,陶磁器としては中国製の交趾(こうち),染付,祥瑞(しよんずい),赤絵など,日本製は志野,織部のほか,桃山から江戸時代にかけて日本各地の窯で焼かれ,また素人の手造りのものもある。
執筆者:


香合 (こうあわせ)

出香した両者の香の優劣を競う香会をいう。平安時代,薫物(たきもの)(練香)の流行にともない,薫物を競い合う薫物合が催されたが,鎌倉時代以後は一木の沈香木で興行された。歌合,根合,菊合,草紙合,絵合などと同じく合せものである。室町末に三条西実隆,志野宗信らが催した名香合の記録《五月雨之記》に〈香あはせのうちにもたきものあはせ……〉とあるように,薫物でも沈香でも香合は催されたのであって,組香による香道の先駆となった。
香道
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「香合」の意味・わかりやすい解説

香合
こうあわせ

たかれた香木の香を聞き,その香銘を当て,匂いの優劣を判定し合う遊戯。文亀1 (1501) 年5月 29日,主人の志野宗信のもとに牡丹花肖柏ほか8名の客が集って,歌合 (うたあわせ) の方式で 10種の香を嗅ぎ分けた「名香合」が特に著名。 16世紀頃になると遊戯上の興味の中心は,匂いと香銘の出典を考え合せて一つの物語を作ることに移っていった。

香合
こうごう

香を入れるためのふたつきの小型の器。香盒とも書き香箱ともいう。おもに香道,茶の湯で用いる。漆器,陶磁器,金属器のほか,貝,象牙,果実の核などで作られたものもある。陶製で型にはめて作った型物香合が特に愛好される。

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