日本大百科全書(ニッポニカ) 「山崎博」の意味・わかりやすい解説
山崎博
やまざきひろし
(1946―2017)
写真家、映像作家。長野県生まれ。日本大学芸術学部に在学していた1967年(昭和42)、寺山修司らが結成した前衛演劇集団「天井桟敷(さじき)」に参加し、舞台監督助手、ついで舞台監督を務める。1968年に大学を中退、翌年よりフリーランスの写真家として活動を始める。当初、前衛舞踏や現代美術を撮っていたが、やがて写真の原理をめぐる思索を深め、光(太陽)、時間といった写真を成立させている根本的な事象を扱った、独自のコンセプトにもとづく作品制作に取り組むようになる。1974年同じ窓からの光景を定点撮影したシリーズ、同一のフレーミングによって水平線を撮った海景のシリーズ、同じく一定のフレーミングで風にゆれる桜の枝を撮影したシリーズ、という三つのパートで構成された初個展「OBSERVATION・観測概念」(ガレリア・グラフィカ、東京)を開催。同じタイトルによる個展を、以後1979年まで計5回にわたり東京で連続開催する。また、1973年から16ミリフィルムによる実験映画の制作も手がける。太陽にカメラを向けて長時間露光しているうちにカメラが燃えだしてしまう、というフィクションを描いた『光学的観測』(1974)や、天体観測用の赤道儀に取りつけて、画面の中心点がつねに太陽の方角へ向かうようにセットしたムービー・カメラを、一昼夜にわたり360度回転させて太陽の軌跡の連続撮影を行った『ヘリオグラフィー』(1979)などの映画作品を発表。
1983年太陽の長時間露光による写真作品「海と太陽」のシリーズで、日本写真協会新人賞受賞。同年写真集『HELIOGRAPHY』刊行。1985~1989年(平成1)季刊思想誌『クリティーク』の表紙に、写真と文からなる「クリティカル・ランドスケープ」シリーズを連載。1990年、超望遠レンズを用いて桜の花や枝葉越しに太陽を撮った一連の写真作品「櫻―EQUIVALENT」を、東京の細見画廊などで行った個展で発表。1994年、水平線を撮影した写真によるカレンダー作品で全国カレンダー展総理大臣賞受賞。2001年の個展「櫻花図」(ニコンサロン、東京・大阪)では、カメラを使わず、小さなストロボを光源として桜の花をフィルムに直接焼きつけた、フォトグラムの手法による作品を発表、同展で伊奈信男賞を受賞。
[大日方欣一]
『『HELIOGRAPHY』(1983・青弓社)』▽『『水平線採集』(1989・六耀社)』▽『「CRITICAL LANDSCAPE」(カタログ。1990・ヒルサイドギャラリー)』