翻訳|substation
発電所で作られた電気エネルギーを遠くの需要家まで効率よく送りとどけるには,なるべく電圧を高くして,送電線に流れる電流を少なくし,送電線の抵抗で失われる電力をできるだけ少なくする必要がある。一方,使うときには安全で使いやすい電圧に下げることが必要である。このように電圧を適切な値に変える役目を変電所は果たしている。さらに変電所はそこに接続される送電線を通して,各所より電気を集めて,必要な所に配分するとともに,電圧を適切な値に維持,調整している。また万一事故が発生したときは,直ちにこれを検知して事故区間の切離しを行い,電力供給に支障が生じないようにするとともに,電力設備の保護も行っている。発電所や他の変電所との間で,超高圧送電線を通して大容量の電力の授受を行っている超高圧変電所,154kV送電線に接続される一次変電所などの送電用変電所と,一般需要家に直接電力を配分するための配電用変電所がある。従来送電用変電所はおもに屋外式で,いったん電気を集める母線や開閉装置類は空気絶縁に頼っていたので,広い絶縁空間を必要とした。近年遮断器,断路器,母線などの各種機器を六フッ化イオウSF6ガスなどの絶縁性能のとくに優れた絶縁媒体を封入した容器内にコンパクトにおさめた縮小形開閉装置(ミニクラッド)が開発され,これを導入することにより,所要スペースの大幅な節約が可能となり,安全性の向上,保守の省力化にも効果をあげている。また大都市部の電力需要密度の飛躍的増大に対処するため,前述のSF6ガス絶縁による縮小化を全面的に採用した超高圧地下変電所の建設により,用地確保と環境問題の解決が図られている。都市部の配電用変電所やこれに接続する送電用変電所などでは屋内式が多くなってきた。変電所で扱う電力としては,配電用変電所の2~6万kVA級より,500kV変電所では500万kVAを超える容量のものまである。特殊なものとしては,電気鉄道に直流電力を供給するため,交流を直流に変換する変電所や,周波数の異なる二つの電力系統を接続するための変電所である周波数変換所などがある。
変電所に設置されるおもな設備と配置例を図に示す。まず中心となる設備で,電圧を適切な値に変圧する主要変圧器,電力の送電,停止を行ったり,事故時の大電流を自動的に切るスイッチの役割を果たす遮断器,あちこちより送られてくる電気を1ヵ所に集める役目の母線(従来撚線導体が多かったが,最近はアルミパイプも使われるようになった),送電線や母線ならびに変圧器,遮断器などの機器の切替えや点検修理のため,負荷電流や事故電流の流れていない状態で開閉操作を行う断路器,落雷により大きな異常電圧が電線を伝わって入ってきたとき,ここから大地に逃がして変電所の機器を保護する避雷器,電圧・電流・電力を測定したりリレーを動かすため,電圧電流を扱いやすいよう一定の比率で小さくする計器用変成器や,送電線を通って変電所に出入りする無効電力を制御して電圧を調整する調相設備(同期調相機と呼ばれる発電機と同じ構造の回転機やコンデンサー,リアクトルなど)などがある。
変電所の運転は,電力・電圧・電流の測定を行うメーターや,電力系統の事故の有無をつねに監視,保護する役目の継電器類を納めた配電盤室で,通常は給電指令所からの指令に従って行われる。変電所の運転,制御は従来配電盤室で手動により行われていたが,近年設備の増大や,電力供給の高信頼度化の要請に対処するため,遠方監視制御方式の導入など各種の自動化が進められている。また給電,配電との協調を図るため,コンピューターシステムを導入して,変電所の大規模な集中制御が進められている。
執筆者:芹沢 康夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
発電所からの電力を需要家に送る過程で、変圧器または整流機器などによって、構外からの交流電力を異なった電圧の交流または直流電力に変え、ふたたび構外に送り出す施設。前者の交流電力に変えるものは、一般の電力系統の変電所で、後者の直流電力に変える代表的なものとしては、電気鉄道用変電所がある。
日本では、明治の中期に大都市に発電機を設置して、1000ボルト程度の交流配電が行われた。しかし、この年代のものは、規模からいって変電所の形態をなしていない。明治の後期になって、都市から遠く離れた水力発電所が建設され、数万ボルトの送電線によって送電され、現在いわれている意味の変電所が誕生した。電力需要が著しく増大し、大電力発電所が多数建設され、大電力の送電を行うにつれ、次々と高電圧が採用されている。当然、変電所も高電圧・大容量となり、また他系統との連系のため、きわめて重要な役割を果たしている。なお、水力発電所や火力発電所などでも、電力を送電線で送りやすいように、変圧器を用いて高電圧にあげているが、これは発電所の設備の一部とされている。変電所の電力系統における役割としては、送配電系統電圧の変換・調整、送配電線の保護、電力潮流の調整などがある。
[松田高幸]
変電所の分類はあまり明確ではないが、普通、超高圧変電所(275キロボルト/154キロボルト、500キロボルト/275キロボルトクラスなど)、一次変電所(154キロボルト/66キロボルトクラス)、中間変電所(66キロボルト/22キロボルトクラス)、配電変電所(66キロボルト/6.6キロボルトクラス)に分類されている。
制御方式によって分類すると、手動制御式、自動制御式、遠方制御式に大別できる。遠方制御式変電所は、遠方の変電所または制御所から制御される変電所で、中間変電所や配電用変電所ではこの方式が多くなっている。また、外観的な形態からは、屋内変電所、屋外変電所、半屋外変電所、地下変電所などに分類される。大都市ではほとんどが地下変電所である。
[松田高幸]
変電所の設備としては、変圧器、電圧調整設備、遮断器および断路器、避雷器、計器、保護リレー、配電盤などがある。変圧器は電圧の変成を行うもので、単相型と三相型とがあるが、経済的に有利な三相型が用いられている。変圧器の容量は、超高圧変電所用の150万キロワットから配電変電所用の1万キロワット程度のものまで大きな差がある。電圧調整設備は、電力用コンデンサー、分路リアクトルなどで、変圧器のタップ切替え装置とともに電圧の調整に用いられる。避雷器は、送配電線から侵入する雷電圧などから変電所内の機器を守るためのもの。計器は、変電所の運転状態、負荷状態、回路電圧状態などを検知するもので、電流計、電圧計、電力計などである。保護リレーは、機器や送配電線の事故の際、事故点を回路から自動的に切り離すために、事故をすばやく検出し、遮断器に遮断信号を送るものである。また配電盤は、遮断器その他の機器を監視・制御するために、計器、リレー、各種警報装置を配列した盤である。
電気鉄道用変電所は、数万ボルトの交流電力を受け入れ、これを変圧器によって千数百ボルトの交流電圧とし、さらに整流器によって1500ボルト程度の直流電圧をつくり、これを電車線に送るところである。交流区間では交流電圧をそのまま電車線に送る。
[松田高幸]
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