電力系統はふつう大別して発電,送電,配電の三つに分けられる。〈配電線路とは発電所,変電所もしくは送電線路と需要設備との間,または需要設備相互間を結ぶ電圧5万ボルト未満の電線路,およびこれに付属する開閉所そのほかの電気工作物をいう〉と電気事業法施行規則では定義しているが,一般には,配電用変電所から需要家の引込口に至る間が,配電系統として取り扱われる。配電系統は配電用変電所,高圧配電線路,配電用変圧器(受電用逓降変圧器や柱上変圧器),低圧配電線路,引込線により構成され,その一例を図1に示す。配電系統の電圧は,日本では高圧は6.6kVが標準になっているが,大都市中心部など電力需要密度の高い地区では,20kV級の特高配電も普及し始めている。日本の低圧配電線の電圧は電灯用100V,動力用200Vにほぼ統一されているが,高層ビルなどでは400V級配電も使われるようになってきた。また電圧変動については,電気の供給点で標準電圧100Vに対しては(101±6)V以内に,200Vに対しては(202±20)V以内に維持するよう法的に定められている。特高・高圧配電線は従来負荷の分布に応じて,放射状に幹線や分岐線を延長していく方式が多かったが,都市の需要密度の高いところでは,電線路の末端を結合開閉器で相互に接続し,環状にしたループ方式が用いられる。この方式では電流分布が改善され,電圧降下や電力損失が少なくなり,故障区間を局限できる利点があるが,故障の検出は困難になる。さらに2回線以上の送電線から供給を受ける配電用変電所群を,高圧配電線でつなぎ,並列運転する高圧ネットワーク方式では,信頼性や需要増加に対する柔軟性もいっそう高まるが,施設費,運転費が高くなる。
低圧配電系統は,日本では配電用変圧器ごとに独立した低圧線をもつ放射状系統がほとんどである。近年都市部では,同一高圧線に接続されている2台以上の配電用変圧器の低圧幹線を,区分保護装置を通して相互に接続するバンキング方式が用いられるようになり,電圧変動,電力損失が少なくなった。さらに都心部など高い供給信頼度を要求される地区では,低圧配電線を網目状にし,ネットワーク変圧器とネットワークプロテクターを通し,2回線以上の給電線で供給する低圧ネットワーク方式により,無停電供給を計っている。またビルなどの高信頼度を要求する負荷には,上記と同じ考え方に基づくスポットネットワーク方式が用いられる。低圧配電方式としては,配電用変圧器二次側中性点を接地して,中性線を引き出し,両外側の電圧線とともに3線で負荷に供給する単相三線式(図2-a)がおもに用いられ,ふつうの100V負荷は中性線と電圧線の間に接続され,容量の大きい200V負荷は両電圧線間に接続される。この方式では,負荷が対称なら,電圧降下率および電力損失は単相二線式の1/4に減少し,経済的に有利である。また電線路の末端にバランサーとして単巻変圧器を設置すると,常時および故障時の不均衡を大幅に軽減できる。電灯需要と動力需要の混在する地域では異容量三相四線式(図2-b)が一般に行われる。このような地域にはY結線三相四線式(図2-c)による供給が最適であるが,両負荷の定格電圧の比が1:\(\sqrt{3}\)でなければならないので,一般には使用できない。しかし,最近の400ボルト級配電には普及し始めている。
配電線には架空線と地中線がある。一般家庭や商店,小工場などは通常,架空線によって供給される。配電柱には鉄筋コンクリート柱,木柱,鉄柱が用いられる。その高さは,架空線の最低地上高で決まり,低圧架空線では,一般に5m以上,道路,鉄道などの横断個所では6m以上になっている。電柱間距離は都市で30~50m,その他では40~70m程度である。電線には架橋ポリエチレン電線がおもに使われ,電線路が家屋などに接近し,規定の離隔がとれない場所では架空ケーブルが使用される。配電柱の装柱例を図3に示す。地中配電線路は,先進諸国の都市では非常に普及しているが,日本でも都市美と安全の両方の観点から近年増加の傾向にある。しかし建設費の高いのが欠点である。地中配電線には昭和40年ころまでは油浸ベルト紙絶縁ケーブルが用いられていたが,現在は架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVTケーブルともいう)が一般に用いられる。ケーブルは直埋式,管路式および暗きょ式により敷設される。
できるだけ安価で質のよい(電圧,周波数が規定値に維持されている)電力を無停電で供給するためには,配電線での電力損失や電圧降下を減らし,避雷器を設けて雷害を防止するとともに,配電設備が有効に利用されるよう,配電線路を計画,設計する必要がある。そのためには需要家の種類,数,負荷の時間的変化,負荷密度などを的確に把握するとともに,将来の発展の動向も見通さなければならない。需要特性を表す係数として,需要率=(最大需要電力)×100/(設備容量)や,需要家相互間や配電設備相互間で最大需要電力の発生時間に差があるので,各負荷を合計したものの最大電力は,個々の最大電力の和より一般に小さく,その程度を表す不等率=(各負荷の最大需要電力の和)/(合計したときの最大需要電力)や,ある期間中の負荷の平均電力と最大電力の比を表す負荷率=(ある期間中の負荷の平均電力)×100/(その期間中の負荷の最大電力)や,損失係数=(ある期間の電流の2乗の平均)/(その期間の最大電流の2乗)が用いられ,配電計画を立てるうえでの基礎的な指数としている。負荷率が高いほど供給設備は有効に利用されていることになるので,その大小は電力料金算定上に大きな関係がある。
→地中送電 →電力ケーブル
執筆者:芹沢 康夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
電力系統から工場や家庭などの需要家へ電気を供給することをいう。電力系統とは、電力の発生、輸送、需要家への供給のための設備である発電所、送電線、変電所、配電線などを総称したものをいう。発電所は一般に需要地域から離れて設置されるため、電力の輸送には送電線が利用される。遠隔の発電所から電力を輸送するためには、高電圧化するほど効率的となる。その理由は、所定の電力を輸送する場合、電圧が高くなるほど流れる電流が少なくなり、この分損失が小さくなるためである。これらを有機的に結合するため、発電所においては変圧器によって高電圧化し、送電線(発電所間または発電所と変電所との間の電線路)を用いて、需要家近傍まで輸送し、これらの変電所で逐次電圧を低下し、一般家庭には配電線を用いて、100ないし200ボルトの電圧で供給している。
[松田高幸]
配電線とは、「発電所、変電所、もしくは送電線と需要家設備相互間の電線路および、これに付属する開閉所」と定義されており、発電所でつくられた電力が、変電所や送電線を通って届けられる場合、最後の変電所から工場や家庭までの電線路といえる。したがって、配電線といっても、電力を一定の場所から他の一定の場所へ輸送するという本来の目的からすれば、送電線とまったく同じものであり、電力の輸送、回路の計算、支持物、絶縁などについては本質的に異なるものではない。しかし、他の面からみれば、(1)個々の設備は小規模であるが、面的広がりをもって施設され、その設備数はきわめて膨大である。(2)不特定多数の需要家に供給しているため複雑な構成となっており、さらに需要増に対して柔軟性が要求される。(3)設備はほとんど消費地の中にあり、路上に施設される場合が多いため、その施設にあたっては家屋、建造物、道路などによる制約も受ける。このため、設備計画にあたっては技術的な面はもとより、地域状況などを十分勘案する必要がある。(4)設備は地域状況および気象条件など外的要因により大きく影響を受けるため、設備ならびに系統構成にあたっては外的条件を考慮するとともに、社会安全面にも十分配慮しなければならない。などの特徴を有する。そのため、需要家に対するサービス面、経済性などを総合した計画、設計、工事、保守が必要となる。
[松田高幸]
日本における配電方式には種々のものがあり、また分類の仕方によってはいろいろの呼び方があるが、その代表例は次のとおりである。
[松田高幸]
負荷の種類による区別(電灯線、動力線)、供給電圧による区別(特高線、高圧線、低圧線)、供給契約方法による区別(従量線、定額線)、供給時刻による区別(夜間線、昼間線)のようにきめ細かく定められている。
[松田高幸]
直流式、交流式に大別できる。直流式は日本の一般の配電線には用いられていないが、電車やエレベーターのように電動機の速度を加減する必要がある場合、電気分解やめっきなどを行うような特殊な負荷の場合には、交流で受電して需要家構内で直流に直して用いられている。交流式は、発電所あるいは変電所から高い電圧で経済的に需要家近傍まで輸送して変圧器で自由に電圧変換できるので、今日ではほとんどこの方式が採用されている。なお、交流は単相交流と三相交流に分類できる。
[松田高幸]
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