改訂新版 世界大百科事典 「周波数変換」の意味・わかりやすい解説
周波数変換 (しゅうはすうへんかん)
直流を含む,ある周波数の交流から異なる周波数の交流へ変えること。電力で応用される場合と通信で応用される場合の二つがある。
電力
整流器とインバーターの組合せで,交流を一度直流に変換してから別の交流に変換する間接変換方式と,サイクロコンバーターで交流から交流へ直接に波形変換する直接変換方式とがあり,サイリスターやパワートランジスターを用いた変換器で実現される。通常の変換器はスイッチ作用で出力の交流波形を作るので,ひずみの少ない正弦波をうるには平滑用のフィルターを必要とする。その容量を小さくするために,複雑な変調方式をとったり,多数の変換器を組み合わせて波形改善を行ったりする。
この応用として,出力の電圧や周波数を一定に保つ方式(CVCFと呼ばれる)と電圧や周波数を可変にして使用する方式(VVVFと呼ばれる)がある。前者は電源装置として,通信情報装置の安定化電源,高周波誘導加熱,超音波発生器,特殊なものとしてヨーロッパのかなりの電気鉄道の電化方式で採用されている162/3Hzの交流電源などに使われる。後者は交流電動機の速度制御の目的に用いられる。電力系統での異周波連係も周波数変換の一つである。日本では中部地方より西側の電力系統では60Hz,東側の系統では50Hzの交流が用いられている。電力発生設備を有効に利用し,系統内に事故が発生しても補いうる供給予備力を保つには,この二つの系統を相互に連係するのが望ましい。この異周波連係には連係点に周波数変換設備を必要とする。このような設備をもつ変電所を周波数変換所と呼んでいるが,その構成は線路長が零の直流送電設備と同じである。日本ではそれぞれ30万kVAの設備容量をもつ静岡県の佐久間周波数変換所(電源開発)と長野県の新信濃周波数変換所(東京電力)が東地域と西地域の連係をしている。
執筆者:正田 英介
通信
ダイオード,トランジスター,非線形容量などの非線形特性を使って,周波数f1の入力信号とf2の内部発振信号からf1-f2,またはf1+f2の信号に変換すること。スーパーヘテロダイン方式は入力f1と局部発振f2を連動させて一定の中間周波f1-f2に変換して増幅検波するので,この方式では安定な高利得と優れた選択特性が得られる。アップコンバーターは非線形容量をf2で励振しておき,同調回路を通してf1の入力信号を加え,f1+f2の同調回路を通して高周波に変換された出力を取り出す。このときf2の電力が変換されて,(f1+f2)/f1の利得が得られる。これをパラメトリック増幅作用と呼び,マイクロ波の電力増幅器などに用いられている。図にAM放送受信機の周波数変換回路を示す。トランジスターQ2の局部発振出力f2とフェライトアンテナ同調回路からの入力f1が,トランジスターQ1の混合回路でf2-f1の中間周波に変換され,次段へ送られる。
執筆者:柳沢 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報